【動画で学ぶ!】アスベスト試料採取方法 ~天井材編~

本記事の要約

  • 「バーミキュライト」「けい酸カルシウム板第1種」「吸音板」「石膏ボード」等、天井にはアスベスト含有の可能性がある建材が使用されている。
  • 1950年代から1990年代にかけて建てられた建物は、アスベスト含有建材の使用がピークであり含有確率が高いため、採取時は注意が必要。
  • 健康被害を防ぎ、安全第一で作業を進めるために、必要な道具を準備し適切な保護具を着用しましょう。
  • アスベスト試料採取は安全に細心の注意を払って行い、予想される被害を意識し予防対策をしましょう。
  • 試料採取後は、適切な手順で清掃・片付け等を行い採取後の発じん被害を防ぎましょう。
アスベスト試料の採取方法に困っている方、必見!

本記事では、デイラボが実際に行っているアスベスト調査における試料の採取方法を例として初心者でも対応できるように分かりやすく解説していきます。今回は天井材を例として天井に潜む代表的なアスベスト含有建材を説明した上で、必要な道具や適切な服装、そして採取フローから採取後の清掃や片付けまで丁寧に説明します。また、実際の採取動画を基に手順も確認できるので初めての方でも安心です。

本記事を通して、飛散リスクを抑え安全に試料採取を行うための適切な知識を習得しましょう。安全な作業を行い皆様の健康を守るためにも、是非最後までご確認ください。

天井に使用されている代表的なアスベスト含有建材について

アスベストは、耐火性、断熱性、防音性等多くの特性を持ち非常に優れている材料であることから、過去に多くの建材に使用されていました。
天井材もその例外ではなく、施工年によっては建材の中でもアスベスト含有の可能性が高い部位とされています。

天井材の種類とアスベスト含有の可能性

アスベストは様々な種類の天井材に使用されてきました。吹付け材が代表的ですが、「けい酸カルシウム板第1種」や「石膏ボード」などにも、アスベストが使用されている場合があります。

以下に、代表的な天井面に施工されている建築材料の種類と用途や特徴をまとめました。
天井面に施工されている建材レベル 用途や特徴
吹付けパーライト
吹付けバーミキュライト(ひる石)
1・内装材の天井に、吸音、仕上げ材として使用。
・骨材混入の粗面吹付仕上げとなっている。
けい酸カルシウム板第1種3・主に内装の仕上げ材として使用。
・軽量で耐火性、断熱性に優れている。
吸音板3・天井板として多く使用。
スレートボード3・不燃材料等として使用。
・湿度による変化が少ないため、浴室にも使用。
石膏ボード3・仕上げ材、下地材、裏打ちとして使用。
パーライトボード3・下地材として使用。
けい酸カルシウム板第1種に限り「その他のレベル3材料」と区分され、厳しい措置が求められます。詳しくは以下の記事を参照ください。

【アスベスト】レベル3建材の中でも特に注意!けい酸カルシウム板第1種の特徴

本記事では、アスベストの使用の可能性のある材料のうち、【けい酸カルシウム板第1種:通称ケイカル板】の特徴や法的な取り扱いについて解説いたします。

けい酸カルシウム板第1種に限り「その他のレベル3材料」と区分されていますが、そのような厳しい措置が求められる理由としては、(レベル3建材の中で)アスベスト繊維の飛散性が高い=アスベスト暴露の危険性が高い材料であるからです。どのように見分けるべきなのかを解説いたします。

表にまとめた建材以外にも、様々な種類の天井材が存在します。天井材の種類だけでアスベスト含有の有無を断定することはできませんので、試料採取後は分析会社においてアスベスト含有調査を行いましょう。

参考資料:目で見るアスベスト建材|国土交通省

施工年によるアスベスト含有リスク

建物の竣工年も、アスベスト含有リスクを判断する上で重要な要素です。

日本では、2006年9月1日以降、アスベストの使用が原則禁止されています。そのため、2006年9月1日以降に着工されたことが明らかである建物には、アスベストは含まれていないと考えられます。
一方、それ以前に建てられた建物では、アスベスト含有建材が使用されている可能性があります。特に、1950年代から1990年代にかけて建てられた建物は、アスベスト含有建材の使用がピークでありアスベスト含有の可能性が高いため、採取時は注意が必要です。

アスベスト試料採取準備

実際にアスベスト試料を採取する際は、適切な準備や手順、安全対策が不可欠です。これを怠ると、自身や周囲の人々の健康に深刻な影響を与える可能性があります。

健康被害を防ぎ、安全第一で作業を進めるために、以下の準備事項をしっかりと確認し必ず守って対応しましょう。

採取時に必要な道具

まず、アスベスト試料採取時の必要な道具についてです。
下記が採取そして補修用で必要な基本的な持ち物となりますが、調査対象の材質・設置状況によって変わります。また、天井材の試料採取時は高所作業となる場合が多くあります。足場や高所作業車、脚立など追加装備が必要になる場面もあるため併せて準備しましょう。
デイラボでは、より効率的な採取を目指し電気工具ハンマドリルを使用しての採取も行っております。業者や採取箇所の状況によって使用する道具は異なるためご注意ください。状況に応じて柔軟に対応できるよう工具はハンマー、ラジオペンチ、タガネ、スクレーパー、カッターナイフ等多数用意しましょう。また、採取後の飛散防止対策兼補修用の道具も忘れずに持参しましょう。
  • ヘルメット等の保護帽
  • 保護メガネ/ゴーグル
  • 国家検定防じんマスク
  • 使い捨て手袋
  • ウエットティッシュ
  • トレイ
  • チャック付きビニル袋
  • 工具
    ・ハンマー          ・ラジオペンチ
    ・タガネ           
    スクレーパー
    ・カッターナイフ       ・ニッパー
    ・別たち
               ・プライヤ
    ・打診棒           ・指し棒           
    ・下地チェッカー  等
  • 養生テープ
  • マスカー
  • ライト
  • 湿潤スプレー:水を入れた霧吹きスプレー等
  • カラーテープ、カラースプレー、接着剤等 補修グッズ
  • (必要であれば)サッカー:真空吸着式運搬器
  • (必要であれば)HEPAフィルター付き掃除機

採取時の適切な服装

次に採取時の適切な服装に関してです。具体的には以下の装備品を準備します。

試料そのものにアスベストが含まれているか判明していなくとも、試料採取時には必ず適切な保護具を着用してください。アスベスト繊維の吸入を防ぐためには、適切な保護具の着用が必須です。
着用方法は、各製品の説明書をよく読んで正しく着用してください。特にマスクは、着用方法を理解し、顔に密着させ隙間がないように正しく装着することが重要です。
  • 防護服もしくは専用の作業衣
    ※作業時に建築物利用者や滞在者がいる場合、作業者の服装は状況に合わせた容姿とすること。
    また、アスベスト含有の可能性や飛散リスクが高い場合は防護服を着用することが望ましい。
  • ヘルメット等の保護帽
  • 国家検定防じんマスク
  • 使い捨て手袋
  • 安全靴
  • (必要であれば)保護メガネ/ゴーグル

試料採取費用の特徴

天井のアスベスト試料を採取する際は高所での作業となるケースが多くあります。そのため、脚立や足場、高所作業車などを使用し、安全性を確保しながら作業を行う必要があります。
したがって試料の採取を業者に依頼する場合は、万が一に備えた監視役や機材の補助を含め、安全対策として通常は2名体制で対応することが好ましいです。

安全を最優先に、確実かつ迅速な調査を行うための体制であることをご理解いただければと思います。

アスベスト試料採取方法

ここまでの準備を踏まえて、実際に天井材を採取する方法を解説していきます。安全かつ正確に試料を採取するために、以下の手順とポイントを必ず確認してください。

試料採取フロー

必要な道具や保護具が用意できましたら、次は採取作業に取り掛かります。ここでは主な採取フローをお伝えします。

弊社では主にハンマドリルを使用しての採取となります。今回はハンマドリルの用意が難しい場合としてその他の工具を使用する場合も記載しております。会社様によって使用する工具や採取フローは異なりますので参考としてご確認ください。
工具・機材等の搬入、準備
①工事着手前に予め打合せを行ない、所定の場所へ機材等を搬入し整頓して保管する。
②状況により入室禁止措置なども考慮して行う。
養生・湿潤化(必要に応じて)
試料からの発塵が出ないよう、マスカー・養生シート等で落下防止養生を行い、霧吹きスプレー等で湿潤化する。
※散布は可能な限り広範囲に湿潤する。
アスベスト試料の採取
(その他工具使用時)
カッターやスクレーパー等の工具で3~5cm角程度にカットする。

(ハンマドリル使用時)
①集じんカップに掃除機を装着し、ハンマードリルと連結させる。
②天井にハンマードリルを当てて、密封空間を作る。
 ※直上部ではなく、作業に余裕のある角度や範囲で行う。
③天井を貫通した後に粉塵が飛散しないよう、しばらく天井にあて吸引してから取り外す。
採取後の処理・補修
(その他工具使用時)
①採取した試料をチャック式のビニール袋に入れる。
※岩綿吸音板の場合、裏側に捨て貼りの石膏ボードが重なっている場合が多いため、一緒に採取を行う。分離してしまう場合は袋へ入れる前に養生テープを巻き付ける。

(ハンマドリル使用時)
①試料をホールソーごとチャック式袋に入れる。
※岩綿吸音板の場合、裏側に石膏ボードが重なっている場合があるため、一緒に採取を行う。分離してしまう場合は袋へ入れる前に養生テープを巻き付ける。

②試料を後で特定できるように、必要な情報をビニール袋に記載(もしくは別途ラベルを用意し記載したものを袋に添付)する。

③採取後の穴をカラースプレーやカラーテープ等で出来るだけ建材に近い色で補修する。

④養生を撤去し、採取直下周辺をウエットティッシュ等(必要であればHEPAフィルター付真空掃除機)で清掃し作業終了。

動画で確認!試料採取~天井材編~

以下の動画で、天井における実際の試料採取の様子を確認できます。文章での説明と合わせて、作業の流れに対して理解を深めましょう。
TIPS
動画にあるような岩綿吸音板+石膏ボードの採取の場合、石膏ボードの裏紙の採取をし忘れるケースがございます。裏紙はアスベスト含有の可能性がございますのでしっかりと裏紙まで採取を行ってください。

<参考画像> 石膏ボードの断面図

安全第一で作業するための注意点

アスベスト試料採取は、安全に細心の注意を払って行う必要があります。
以下の予想される災害を確認し予防策を守り、事故や健康被害を防ぎましょう。
工種/作業内容起こりうるリスクリスクへの対策
機材等の搬入作業・資材運搬時商品、既存物と接触
・資機材運搬時に躓く
・周囲の確認
・足元の確認
養生または湿潤化・暗所部での躓き転倒
・施設内移動時、第三者と接触
・ヘッドライト等の照明の確保
・関係者への作業場所、時間の周知
  
アスベスト試料の採取・採取時粉塵の吸引
・脚立使用時、墜落転倒
・工具での手指の切傷
・立ち入り禁止エリアに立ち入る  
・既存物の破損
・保護マスクの着用
・水平設置
・保護手袋の着用
・作業箇所の確認
・養生の設置
採取後の作業・通路に資材を置き第三者に接触
・床等に採取屑の飛散
・通路の確保
・こまめな清掃の徹底

アスベスト試料採取後の清掃や片付け

試料採取後は、適切な手順で清掃・片付け等を行い採取後の被害を防ぎましょう。
  • 使用した工具や器具の清掃
    試料に直接接触した工具や器具は、湿らせた布やウエットティッシュ等で丁寧に拭き取る。
  • 養生の撤去、清掃
    養生シートは内折りで丁寧にたたむ。ウェットティッシュ等もしくはHEPAフィルター付き掃除機で清掃を行う。その際、靴裏などにも注意を図る。
  • 写真の撮影
    採取位置や周辺の雰囲気がわかるよう、採取の記録として写真を撮影する。
  • 使用資機材の清掃および片付け
    使用した養生シート、ウェットティッシュ、マスク・フィルターなどは1袋にまとめ持ち帰り、関連法規を遵守して適正に処理する。脚立、保護帽、作業着などの付着物にも注意する。使用した資機材はビニール袋などにまとめる。
  • 手洗い、うがいの励行
    採取者(同伴者含む)は作業終了後、手洗い・うがいなどを励行する。また、衣服の背中などに粉じんが付着していないか確認する。
参考資料:建築物石綿含有建材調査者 講習テキスト

まとめ:アスベスト調査・採取・分析は信頼と実績のデイラボへ

本記事では、アスベスト試料の採取方法の天井材編を解説しました。天井に使用されているアスベスト含有の可能性がある建材の説明や実際の採取方法、その際の注意点まで実際の採取動画を交えながら説明しました。

天井材に限らずアスベスト含有の可能性がある建材における試料の採取は、適切な準備と対策が不可欠です。そのため試料採取は専門業者に依頼することが推奨されますが、自身で採取する場合は、法令を遵守し、安全第一で作業を行うようにしましょう。適切な試料採取によって、正確なアスベスト分析が可能となり、結果的に建物や皆様の安全、健康を確保することに繋がります。

弊社では事前調査一式、採取、分析だけといった依頼もお受けすることが出来ますので、是非お気軽にご相談ください。

その他アスベストに関して何かご不明な点等ございましたら、是非株式会社デイラボにお問い合わせください。
<調査結果報告書 サンプル>
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