アスベスト(石綿)とは?危険性や健康被害、調査方法について

本記事の要約

  • 建築素材としてかつて大量に使用されていた天然鉱物のアスベスト(石綿)は、重篤な健康被害を引き起こす
  • アスベスト(石綿)は建築のどのような場所で多く使用されていたのか。
  • 健康被害を及ぼすアスベスト(石綿)には調査・対策が義務付けられている

アスベスト(石綿)とは

「アスベスト(石綿)」とは「せきめん」や「いしわた」とも呼ばれ、自然界で産出される「繊維状けい酸塩鉱物」のことです。耐久性や耐火性、断熱性にたいへん優れていたため、国内では1975年以前にビルなどの建築材料として大量に使用されていました。

しかしアスベストは繊維が非常に細く飛散しやすいため、吸い込むことで肺がんなどの悪性疾患を発症する物質であることがわかりました。そのため現在は原則として製造・使用が禁止されています。

アスベストの種類

アスベストは鉱物の一種で大きく分けて「蛇紋石族」と「角閃石族」があり、以下の表のように、さらに6つの種類に分類されます。
分類アスベスト(石綿)名
蛇紋岩系クリソタイル(温石綿・白石綿)
角閃石系アモサイト(茶石綿)
クロシドライト(青石綿)
アンソフィライト(直閃石綿)
トレモライト(透閃石綿)
アクチノライト(陽起石綿)
国内で使用されてきたアスベストは、主に以下の3つになりますが、1〜3の順で発がん性が強くなると言われています。

 1.蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)
 2.角閃石族の茶石綿(アモサイト)
 3.青石綿(クロシドライト)

なぜアスベスト(石綿)は使われてきたのか

アスベストは1887年頃に海外から輸入が開始されました。その量は1970年から90年にかけては年間で30万トンにも上り、これまでおよそ1000万トンが消費されたと言われています。アスベストが大量に使用されてきた背景には、軽くて丈夫な上、耐熱性や電気絶縁性などの特性が建築材料として最適だったことが挙げられます。

さらに経済的に安価に手に入れることができたため、利便性が高く吹き付け材や断熱材、スレート材などにも使用されました。建築材料としてだけではなく、摩擦材やシール断熱材などの工業製品にまで活用されたのです。

アスベストによる健康被害の増加とともに、1995年には有害性の高いアモサイトとクロシドライトの使用が禁止されました。そして2006年には代替が困難な製品以外は、アスベストの重量の0.1 %を超えて含まれる製品の製造が禁止となります。そして2012年には「石綿分析用試料等」を除くすべてのアスベスト含有物の製造が禁止となりました。

アスベストによる健康被害は年数がたってから判明するものが多く、当時は危険性に気づいていなかった点も使用を増長させた原因です。

アスベスト(石綿)の危険性、発症する病気

ここからはアスベストがなぜ危険なのか、どのような病気を発症する可能性があるのかを解説していきます。

石綿(アスベスト)ばく露とは

「石綿(アスベスト)ばく露」とは、アスベスト粉塵が空中に飛散し吸入しやすい状態にある中にさらされることです。建築現場やアスベストを使用する職業に関わる方に多いと指摘されています。

アスベストは匂いもなくあまりに細かいため、空気中に浮遊していても意識することができません。知らないうちに「石綿(アスベスト)ばく露」にさらされ、アスベストを吸い込んだという自覚もないまま病を発症してしまう危険性が高いのです。

アスベストにより発症する病気

アスベストによって発症する病気について具体的に解説していきます。

・石綿(アスベスト)肺
石綿(アスベスト)肺とは、アスベストを大量に吸入することで、肺が線維化してしまう病気のことを言い、「じん肺」という病気の一種です。アスベストによる粉塵を10年以上浴びた労働者に発症する可能性が高く、潜伏期間が15〜20年近くあります。

・肺がん
アスベストと肺がんの関連性には不明な点もありますが、肺の細胞に取り込まれたアスベストが何らかの刺激を受けて、肺がんを発生すると考えられています。また肺がんの最大の原因は喫煙ですが、喫煙とアスベスト両方の被害を受けた場合は、肺がんのリスクはより高まると言われています。

・悪性中皮腫
悪性中皮腫は悪性の腫瘍のひとつで、肺や胃などの内臓の腹膜、心臓や大血管を覆う心膜などに発症します。発症の割合は胸膜が最も多く、腹膜や心膜に発症する割合は低くなっています。若い時にアスベストを吸入した方のほうがかかりやすいことが判明しており、潜伏期間が40〜50年と非常に長いことが特徴です。

・びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚とは、肺を覆う臓側胸膜が炎症を起こしている状態の病気です。一般的には胸壁を覆う壁側胸膜にも症状が及んで、双方が癒着していることがほとんどです。びまん性胸膜肥厚は比較的高濃度のアスベスト吸入により発症すると考えられており、潜伏期間は30〜40年と言われています。

アスベスト(石綿)が使用されている場所

アスベストはさまざまな用途に活用されてきましたが、約8割が建築材料でした。どのような場所でアスベストが使用されていたのかを詳しく見てみましょう。

・吹き付けアスベスト
アスベストとセメントを混合したものを、吹き付け工事したものです。クリソタイルやアモサイトなどが主に使用されていました。吹き付けアスベストの対策として、1987年以降から「封じ込め」という作業が行われたため建物の目につきにくい場所に使用されたものが残存している可能性が高い工法です。よく使用されていた場所として、鉄骨の梁や柱、鉄骨鉄筋コンクリート造建築物、空調機械室、ボイラー室や昇降機のための機械室などが挙げられます。

・吹き付けロックウール
吹き付けロックウールとは、1975年にアスベストが禁止されてから切り替えられた工法ですが、1990年まではアスベストを混合して使用されていました。ロックウールをセメントやアスベストと混ぜて、機械で噴出させ天井などに吹き付けます。使用されていた主な場所は鉄骨の梁や柱、鉄骨鉄筋コンクリート造建築物、空調機械室、ボイラー室や昇降機のための機械室などです。

・吹付けバーミキュライト
バーミキュライトとはひる石のことです。バーミキュライトとアスベストを混合して、ロックウールと同じく機械で噴出させ天井に吹き付けて使用されました。結露の可能性があり音の反響を防止する必要のある天井に、断熱効果や防音目的のため施されました。

・アスベスト含有保温材
アモサイトを使用したものが多く製造され、化学プラントやボイラーの配管の保温のために使われました。

・アスベスト含有建築材料
建築材料としてアスベストを含む製品は、内装材、外装材、屋根などにも多く使用されてきました。ほとんどがクリソタイルを使用しており含有率は25重量%以下と言われています。

・アスベスト含有摩擦材
自動車や産業用機械のクレーン、エレベータなどのブレーキ製品やクラッチ製品にクリソタイルや石綿布を樹脂で固めて使用されています。

・さまざまに使用されたアスベスト製品
アスベストはセメントとの相性が良かったため、セメント製品としても多様に使用されました。パッキングとしてのシール素材や電気絶縁素材、ビニール床の裏打ち材などもそうです。歯科技工ではアスベストリボンが1992年に中止になるまで活用され、アスベストが含まれた塩化ビニール石綿床タイルも1989年まで製造されていました。

アスベスト製品は一般的に製造年月日が古くなるほど含有率が多く、危険性も高くなると言われています。

現在のアスベスト(石綿)使用状況と規制

現在は新たにアスベストを使用することは禁じられています。しかし過去に建築されたビルや建物には大量に使用されているため、解体するときにアスベストの粉塵が飛散する可能性があります。そのため増改築や大規模な修繕を行う場合は、アスベスト除去等を行わなくてはいけません。

解体作業などにおいては、現場の労働者の安全面や周辺へアスベスト粉塵を飛散させないために、労働安全衛生法や大気汚染防止法が適用されます。これらの法令に従い解体主は建造物のアスベスト使用の有無や事前調査、作業の届け出を行うことが義務付けられました。

2021年4月からアスベストに関する規制が厳しくなり、作業基準を遵守していない場合には、3ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が課されることになりました。さらに2023年10月からは、建築物に対する解体・改修工事を行う際は、有資格者(建築物石綿含有建材調査者等)による事前調査を行うことが義務付けられています。

アスベスト(石綿)の調査方法、対策

以上のように解体工事や修繕を行う場合は、建築物のアスベスト使用の有無の事前調査と分析調査が必須です。大気中へのアスベスト飛散防止の対策は、原因となる建築材料(特定建築材料)が使用されている建築物などの解体、改造、補修の作業全般で行わなくてはなりません。特定建築材料とは、吹付けアスベストやアスベストを含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材など、アスベストが質量の0.1%を超えるものが対象となるため、しっかりとした調査が必要です。

アスベストの分析方法には定性分析と定量分析という方法があります。どちらで行っても構いませんが、定性分析でアスベストが判定された場合は、規制値の0.1%を超える可能性が高いため調査を進めるなら定性分析方法で十分です。

調査には安心感と信用はもちろん、解体工事をスムーズに進めるためのスピーディさがなくてはいけません。デイラボでは、調査受け入れから最短24時間以内に分析結果報告書を納品が可能な「1DAY」プランを実施できます。お客様から「至急分析してほしい」といった要望を受けた場合にも迅速な対応が可能です。

まとめ:アスベストの危険性や調査法を知りリスク軽減を!

アスベストについてさまざまな面から解説しました。かつては日本の高度成長期になくてはならない便利な素材でしたが、危険性や健康被害に関してはお伝えした通りです。解体工事を実施する場合は、企業の信頼を損なわないためにも周囲への影響や健康被害を未然に防ぐことが重要です。しっかりとしたアスベスト対策を行うことが、法人の皆様の社会的地位を高めます。

デイラボは満足と安心の声をお客様から多数いただいております。アスベストの調査・分析なら、信頼と実績のあるデイラボにぜひお任せください。
弊社では、アスベスト分析業務だけでなく、貴社社員・協力業者様向けのアスベスト事前調査についての勉強会なども行うことも可能です。

1時間程度のお時間を頂き、今回の法改正で変わったこと/今後対応しなければいけないこと/発注者様への説明/工事時に気を付けなければならないことなどをお話させて頂きます。
対面でもZOOMなどでのウェビナーでも対応可能ですので、まずはお気軽にお問合せください。
また、このような情報も含め、アスベストに関する最新情報をメールマガジンとして配信も行っております。

※配信対象は、お取引を頂きましたお客様に加え、お見積りを提出させていただきましたお客様も対象となりますので是非一度お問い合わせ頂ければと思います。