【2023年度(令和5年度)】建設リサイクル法に係る全国一斉パトロール等の実施結果と、これを受けて注意すべき点!
本記事の要約
- 環境省・厚労省・国交省にて行われた全国一斉パトロールの結果について掲載
- 大気汚染防止法や労働安全衛生法(石綿障害予防規則)の対象となった部分のみクローズアップ
- 環境省発表では、約35%の立入現場にて、事前調査結果報告の有無や調査結果の掲示についての指導が行われたとされている。
- 厚生労働省発表では、調査結果の報告の有無については60%弱の立入現場が指導を受けている。また、現場への掲示や備え付けの不備などについての指導も20%近い件数となっている(「石綿指導あり」となった現場の内、約70%が事前調査結果の備え付けや掲示をしていなかったという結果になっている)。
- 調査を行うだけでなく、必要な措置を行うことも義務付けられており、それらの不備が多く見られる結果となっている。
すべての工事においてアスベスト調査が必要
大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」※1となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要※2となりました。 ※1 調査の対象を外れる要件もいくつかございます(こちらの記事を参照) ※2 【よくある誤解!】100万円以下の工事でもアスベスト調査は必須です!
本記事では、【2023年度(令和5年度)】建設リサイクル法に係る全国一斉パトロール等の実施結果と、これを受けて注意すべき点について掲載いたします。
6月~7月及び10月~11月において、都道府県及び政令市等の建設部局、環境部局及び労働基準監督署の職員が建設工事現場に立ち入り、状況確認・指導等を実施
平成 22 年に、再生砕石に石綿含有産業廃棄物(石綿含有スレート板の破片等)の混入がみられたほか、解体現場における石綿ばく露防止対策が徹底されていないおそれのある事案に係る新聞報道等がなされました。
こうしたことを受け、厚生労働省では、国土交通省、環境省と合同で、石綿対策に係る全国一斉パトロールを毎年6月から7月頃まで、10月から11月頃まで実施しています。
今後石綿含有建材を使用する建築物等の解体工事等が増加することが想定される中、解体工事に伴う石綿飛散の防止など、これまで以上に現場における法令の遵守徹底が重要になっています。
このため、厚生労働省では、国土交通省、環境省と合同で、石綿対策に係る全国一斉パトロールを呼びかけるなど、労働者の石綿等によるばく露防止対策の徹底や再生砕石への石綿含有産業廃棄物の混入防止の徹底について連携して対応します。
≪石綿対策に係る全国一斉パトロールの実施(厚労省)≫
建設現場における建設リサイクル法等の遵守を徹底するため、毎年、現場パトロールを実施しています。
今年度も6月~7月及び10月~11月において、都道府県及び政令市等の建設部局、環境部局及び労働基準監督署の職員が建設工事現場に立ち入り、以下の観点で状況確認・指導等を実施しました。
【建設部局】建設リサイクル法の遵守状況の確認及び周知徹底
【環境部局】建設リサイクル法の遵守状況の確認及び周知徹底(再資源化関係)、廃棄物処理法、大気汚染防止法及びフロン排出抑制法の遵守状況の確認及び周知徹底
【労働基準監督署】労働安全衛生法、石綿障害予防規則の遵守状況の確認及び周知徹底
≪令和5年度建設リサイクル法に係る全国一斉パトロール等の実施結果(環境省)≫
実施結果(厚生労働省 関連部局が実施したもの)
立入件数 (うち石綿あり ※1) | 立入現場数のうち、石綿則第4条の2に基づく事前調査結果報告の有無(※2) | 立入現場数のうち、石綿指導あり(※2) | 石綿指導ありのうち、石綿則第3条6項の事前調査結果の備え付け、掲示について指導(※3) | 石綿指導ありのうち、石綿則第35条の2の写真等による作業の実地状況の記録について指導(※4) | |
令和5年 | 3,804 (1,523) | 2,213 | 1,040 | 721 | 212 |
- ※1 石綿ありが明らかなもの(アスベストアナライザーにより石綿含有を確認したもの、事業者が石綿則第3条4項に基づきありとみなしたものを含む。立入日時に石綿作業をしていたか否かに限らない。
- ※2 指導は、文書指導に限らず、口頭指導を含む。ごく一般的な安全訓話は含まないが、現場の状況に応じて石綿について注意喚起した場合を含む。石綿のない現場において、石綿の指導を行った場合を含む(例:事前調査結果の掲示)。
- ※3.4 石綿なしの現場を含む。当該現場の備え付け・掲示/記録の有無または内容について不備等があり、指導を行ったもの。文書指導に限らず、口頭指導を含む。厳密に違反であるか否かは問わない。
実施結果(環境省 関連部局が実施したもの)
対象法令名 | 立入件数 1) 2) | 行政指導件数 1) | 行政指導の概要 |
大気汚染防止法 | 5,592件 | 2,006件 | 主に事前調査 4)結果の報告・掲示の不備に関する指導でした。命令はありませんでした。 |
2)合同で実施したものも各法律に基づく立入検査として計上。
4)建築物等に石綿含有建材が使用されているか否かを調査するもの。
(一部省略 ※石綿以外の項目)
パトロール結果を受けて注意しなければならない点!
まずは、上記の中で指導を受けた内容について整理します。
- 石綿使用の有無の事前調査結果の報告の不備
- 石綿使用の有無の事前調査結果の掲示の不備
- 石綿使用の有無の事前調査結果報告書の備え付けの不備
- 作業の実施状況の記録の不備
主に上記4点が挙げられ、これらの不備が生じないように工事を行って頂く必要がございます。それぞれについて以下にご説明いたします。
事前調査結果の報告
石綿の使用の有無の事前調査結果については、工事着工前までに速やかに(※)石綿事前調査結果報告システムへ登録・申請を行うことと定められています。よって、事前調査を行った結果を報告書として作成し、その内容を前述のシステムまでご申請を行って頂く必要がございます。 ※ 申請の期日については、各自治体にて別途期日を設けている場合もございます。ご留意ください。
石綿使用の有無の事前調査結果の掲示
解体等工事の元請業者等及び事業者は、事前調査の結果及び作業内容等について、大気汚染防止法及び石綿障害予防規則で定められた事項を公衆及び作業に従事する労働者が見やすい場所に掲示しなければならないとされています。 よって、工事看板や事業所内掲示板などに事前調査結果やアスベスト含有時の撤去方法などについて記載を行い、掲示を行う必要がございます。
工事看板例(石綿ありの場合) 《 建築物の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル〔令和4年(2022年)3月訂正事項の反映版〕 P.116》
工事看板例(石綿なしの場合) 《 建築物の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル〔令和4年(2022年)3月訂正事項の反映版〕 P.117》
石綿使用の有無の事前調査結果報告書の備え付け
大気汚染防止法ならびに石綿障害予防規則では、特定建築材料の有無にかかわらず全ての解体等工事において、元請業者等が事前調査の記録の写しを解体等工事の現場に備え置くことと定められています。 上記に記していますが、【特定建築材料(石綿含有建材)の有無にかかわらず】【解体等(改修工事についても該当)】の場合でも、事前調査の記録の写しを備え置くことが必要になります。 例えば、事前調査の結果、アスベストの使用が確認されなかったリフォーム工事の場合でも、その現場に事前調査の記録の写しを備え置くことが求められています。 また、事前調査等の結果の記録を作業場に備え付けることについては、作業を実施する労働者がいつでも記録を確認することができるようにする趣旨で規定したものであることから、紙でも電子媒体でも備え置きの様式は問わないとしている自治体もございます。近年は、工事関連のDX化が進んでいる点を考慮しての配慮かと思われます。現場の状況に適した備え付け方をすることが推奨されています。
作業の実施状況の記録
元請け事業者等には、石綿含有建材(または、含有みなし建材)の除去等作業が適切に行われたことの確認及び作業の記録を作成することが大気汚染防止法ならびに石綿障害予防規則にて定められています。 概ね以下の内容を確認することを目的として定められています。
- 【共通】除去等作業において、作業計画どおりの飛散・ばく露防止措置がとられていたこと
- 【大気汚染防止法】特定粉じん排出等作業の実施状況(石綿含有吹付け材の切断等を伴う除去、封じ込め、囲い込み、石綿含有断熱材等の切断等を伴う除去及び封じ込めを行う場合は確認年月日、除去等が完了したことの確認の方法、確認の結果及び確認者の氏名を含む)
- 【石綿障害予防規則】作業計画に従って石綿使用建築物等解体等作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる記録
- 【石綿障害予防規則】当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した労働者の氏名及び当該労働者ごとの当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した期間
- 【石綿障害予防規則】周辺作業従事者※の氏名及び当該周辺作業従事者ごとの周辺作業に従事した期間(※石綿の除去等作業を行っている場所において、他の作業に従事していた者)
詳細についてはこちらをご確認くださいませ。 《 建築物の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル〔令和4年(2022年)3月訂正事項の反映版〕 P.226~》
まとめ
本記事では、【2023年度(令和5年度)】建設リサイクル法に係る全国一斉パトロール等の実施結果と、これを受けて注意すべき点について掲載いたしました。 上記の結果について、まとめると以下の通りになります。
- 環境省発表では、約35%の立入現場にて、事前調査結果報告の有無や調査結果の掲示についての指導が行われたとされている。
- 厚生労働省発表では、調査結果の報告の有無については60%弱の立入現場が指導を受けている。また、現場への掲示や備え付けの不備などについての指導も立入現場全体の20%近い件数となっている(「石綿指導あり」となった現場の内、約70%が事前調査結果の備え付けや掲示をしていなかったという結果になっている)。
- 調査を行うだけでなく、必要な措置を行うことも義務付けられており、それらの不備が多く見られる結果となっている。
工事に携わる事業様に置かれましては、本記事をご一読頂き、コンプライアンス・法令を遵守し企業活動を行って頂けますと幸いでございます。
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解体・改修工事におけるアスベスト事前調査は原則すべてのものが対象です。
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