アスベスト調査~分析の流れとよくある質問まとめ|専門家が丁寧に解説!

本記事の要約

  • 書面/目視調査は原則実施、且つ一定規模以上の解体・改修工事の場合は、労働基準監督署に電子システムで報告する必要がございます。
  • 「石綿あり・みなし」の判断は、事前調査を行った上での判断です。
  • アスベスト分析には、JIS-1(JIS A 1481-1)およびJIS-2(JIS A 1481-2)という2つの規格があります。
  • 分析方法は含有の有無を調べる「定性分析」含有率を調べる「定量分析」があり、実際の検査は定性分析のみで十分である。
  • 調査結果の信頼性や費用、対応の迅速さなど、様々な要素を比較検討し、ご自身のニーズに合い安心して依頼できる調査・分析会社を選びましょう。
  • アスベストの調査・分析のご依頼や、ご相談等ございましたらデイラボへ!
アスベスト調査・分析を検討中の方へ。

建物の解体・改修工事前に必要なアスベスト調査・分析。
その流れや種類、依頼方法がよく分からずに不安を抱えていませんか?

この記事では、アスベスト事前調査から分析、そして業者選定までの流れを分かりやすく解説します。JIS規格に基づいた定性分析・定量分析の違いや特徴も明確に説明。さらに、よくある質問への回答もまとめていますので、疑問を解消し、安心して調査・分析を進めることができます。

適切な調査・分析を行い、安全な環境を守りましょう。

アスベスト事前調査の流れ

建物の解体や改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行うことが法的に義務付けられています。

適切な事前調査を怠ると、工事中にアスベストが飛散し、健康被害を引き起こすリスクがあります。また、罰則が科される可能性もあるため、必ず実施するようにしましょう。

 事前調査から分析までの流れ

アスベスト事前調査から分析までは大きく以下の流れで進みます。
建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(P.91)_環境省
まず事前調査とは、設計図書等の文書による書面調査(※設計図書等の文書が存在しないときを除く)と、目視調査の両方を行う必要があります。それを踏まえてアスベストの含有の有無を判断できない場合に、石綿が含有しているとみなすケースと分析調査をするケースに分かれていきます。

 書面調査のポイント

  • 2006年(平成18年)9月1日以降の着工が明らかであれば、アスベストは無し
  • 設計図書の作成年代に注意しましょう。
    ※アスベストは段階的に規制強化された物質であり、そのタイミングで【規制値】も変わってきます。例えば、成形板の裏側や設計図書などに『ノンアス』『ゼロアス』など書いてあっても当時の規制値以下=現在の規制値以上の可能性があります。
  • 製品が特定できた場合、メーカー等の証明により有無を確定しましょう。

 目視調査のポイント

  • 分析試料の採取と並行して、施工範囲についても調査しましょう。
  • 書面結果と差異があった場合は、目視調査の結果を優先しましょう。
  • 未調査部分はしっかりと把握し、状況に応じて追加調査を行いましょう。
  • みなしの判定は極小範囲かつレベル3の場合です。撤去費用に大きく影響します。
    ※施工面積が極小でない場合、撤去費用が分析費用を大きく上回る場合があります。
書面/目視調査は原則実施、且つ一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上の解体・改修工事の場合は、労働基準監督署に電子システムで報告する必要がございます。

石綿使用の有無の事前調査結果の電子報告の方法や注意点について解説!

こちらの記事では、事前調査結果の電子報告の方法や注意点を解説しています。実際に報告の必要なケースに直面する際は是非ご活用ください。

事前調査の結果は、行政の公開している石綿事前調査結果報告システム(以下、電子報告システム)にて、インターネット上で届け出ることが可能となっています。

そして、「石綿あり・みなし」の判断は、事前調査を行った上での判断をします。調査を行わずにいきなり「みなし」で工事を行うことはできません。
参考資料:建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル_環境省,厚労省‐付録Ⅰ

アスベスト分析調査について

アスベスト分析調査とは

アスベスト分析調査とは、建材などにアスベストが含まれているかどうかを分析する調査のことです。事前調査を行いアスベスト含有の有無が判断できず分析をする場合は、建築物や解体現場などから試料を採取し、分析を通してアスベストの有無や種類、含有量などを特定します。アスベストが含有されていると判明した場合は、適切な除去工事が必要となるため、正確な分析が重要です。

規格JIS-1,JIS-2の違い

アスベスト分析には、JIS-1(JIS A 1481-1)およびJIS-2(JIS A 1481-2)という2つの規格があります。どちらを起用しても問題はございません。
●JIS A 1481-1

偏光顕微鏡による分析方法です。
国際規格ISO 22262-1を基準にしており、国際的にも広く活用されています。

実体顕微鏡と偏光顕微鏡を使用することでアスベストの形態や光学的特性を観察し判別を行います。アスベストを含有する層を特定できるので、アスベストのある部分の除去方法を選定可能です。

結果までの所要日数も短いことがメリットですが、分析者の高度な力量を必要とします。

また、おおよその含有量(推定質量分率)を求めることが可能です。(例:0.1-5% / 5-50% / 50-100% )
事前調査を踏まえてアスベストの含有が判断できなかった場合はアスベスト分析調査を行います。
●JIS A 1481-2

位相差分散顕微鏡およびX線回折法、分散顕微鏡による分散染色法による従来からある日本独自の分析方法です。

分析者の技量は問われませんが、サンプル全層の粉砕を行うため含有層の特定が難しく、「繊維状でない鉱物」まで判定してしまう可能性があります。
JIS-2を依頼する先が、偏光顕微鏡での確認まで行っているかを事前にチェックしましょう。

また、含有層の濃度を薄めてしまうので、アスベストが含まれない判定が出てしまう可能性もあります。
上記を踏まえ、ポイントを以下の表にまとめました。
規格分析方法特徴
JIS-1    偏光顕微鏡・層別に分けて前処理、含有層の特定が可能。
含有箇所別に除去方法の選定が可能。
精度が高く所要日数も早い。
JIS-2位相差分散顕微鏡
およびX線回折法      
・検体を全層粉砕するため、含有層の特定が不可能
 含有層が希釈されて不含有判定になる可能性あり
・X 線回折装置の結果を用いるため分析者の力量に依存しないが、アスベストと似た性質の鉱物などに干渉されることがある
・X 線回折装置のみではアスベストと同じ組成の物質について、アスベスト形状(アスベストフォーム)かどうかの判別はできないため、繊維の有無・形状の確認に有効な位相差分散顕微鏡を用いて判別を行う

定性分析・定量分析の違い

アスベスト分析には、「定性分析」と「定量分析」の2種類の方法があります。「定性分析」はアスベストの有無を調べる分析方法で、「定量分析」はアスベストの含有量を調べる分析方法です。
目的に応じて適切な分析方法を選択することが重要です。また、費用や期間は分析方法や試料数によって異なるため、事前に確認することが大切です。
●定性分析

「アスベストの含有の有無を確認するための分析方法」であり、どんな種類のアスベストが含有されているかを分析します。
国際規格ISO 22262-1を基準とした国内規格JIS A 1481-1と日本独自規格のJIS A 1481-2があります。方法としてはどちらを使用しても問題はありません。
●定量分析

「アスベスト含有が確認された試料で含有率を確認するための分析方法」であり、何%含有していたかを判定します。
JIS A 1481-3、JIS A 1481-4、JIS A 1481-5の規格で行う分析方法です。何%アスベストを含有するか検査し、除去工事の際のフィルター交換の目安にもなります。しかし定性分析でアスベスト含有と判定された場合は、前述の通り、JIS A 1481-1はおおよその含有量(推定質量分率)を求めることができ、ほぼ規制値の0.1%を超えるため、実際の検査は定性分析で十分と言えます。

石綿が含有されていることが判明した場合求められるのは、アスベスト含有建材としての適切な処理。定量分析はあくまで補助的な指標として、必要と感じられた場合に活用する形で問題ありません。
石綿予防規則に基づく定性分析から定量分析までの流れは以下となります。
(※)定性分析で石綿ありと判定された場合において、定量分析を行わずに、石綿が0.1%を超えているとして扱うことも可能としています。

参考資料:建材中の石綿含有率の分析方法等に係る留意事項について

アスベスト分析で実際に用いられている分析手法の比率について

現状、実際に解体・補修工事にあたって事前調査における分析で用いられている手法の大半がJIS-1による定性分析です。法律で定められた義務をクリアするにあたっても実際の作業の安全に配慮する上でも定性分析を行い、石綿が検出された場合は必要な措置を講ずれば十分です。

定性分析のうち層ごとの分析が可能なJIS-1によって行うのが望ましいと言えるでしょう。実際、デイラボにご依頼いただく分析も全体の98.4%がJIS-1による分析であり、JIS-1分析に特化しております。

<弊社分析サービスご依頼割合>

アスベスト分析のフローについて

ここでは現在主流とされているJIS-1による定性分析のアスベスト分析調査の流れを解説いたします。大まかな流れとなりますのでご参考程度にご確認ください。
STEP
試料の受入・確認
  • サンプルの外観・状態を確認。
    (アスベストが微量ではないか、視認が困難ではないか 等)
STEP
※STEP1での確認が困難の場合※
 試料調製(灰化・酸処理・浮遊沈降)
  • 顕微鏡観察に先立って、試料の大部分を構成する非アスベスト成分を除去する操作であり、顕微鏡観察で繊維が検出されやすいようにすることが目的。
  • 灰化:試料を485℃で10時間加熱し、有機物を除去する。
  • 酸処理:2mol/Lの塩酸で酸可溶性物質を溶解する。
  • 沈降・浮遊:試料を精製水中に投入し、浮遊物・懸濁物・沈降物に分離する。試料を適切なサイズに切断または粉砕(ミルなどを使用)。
STEP
前処理
  • 試料から繊維を取り出したり繊維から付着物を取り除いたりする操作。
  • 偏光顕微鏡観察を容易にすることが目的。
STEP
実体顕微鏡観察
  • 多くのアスベスト含有建材では実体顕微鏡観察でアスベストが検出可能。
  • 繊維の仮同定を行う。
STEP
偏光顕微鏡用標本の作製
  • 実体顕微鏡での仮同定の結果に基づき、偏光顕微鏡用の標本を作製する。
STEP
偏光顕微鏡による同定
  • 形態や色、複屈折の有無や大きさ等の項目を観察し、アスベスト繊維を同定する。
STEP
結果のまとめ・報告書作成
  • 試料の外観写真と検体の断面写真とともに、層別の分析結果を報告書にまとめる。
参考資料:石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル 【第2版】 

アスベスト分析調査の依頼方法・流れ

では、実際にアスベスト分析調査を依頼する際の手順は、どのような流れなのか一般的な流れを説明していきます。
分析調査会社によって多少の違いはありますが、大まかな流れは共通しています。スムーズな調査実施のためにも、事前に流れを把握しておきましょう。
お問い合わせ・見積もり
自社で事前調査を行う場合、まずは分析会社に問い合わせを行い見積りを請求しましょう。見積もり内容には分析費用、分析結果報告書作成費用などが含まれます。
不明点があれば、この段階でしっかりと確認しておきましょう。
分析依頼書、分析サンプルのお預かり
分析依頼書と共に、分析サンプルを分析会社へ受け渡します。
デイラボでは郵送の他、直接お持ち込みいただいても承ります。駐車場も完備しており、お車でお越しいただくことも可能です。
分析
分析会社にてアスベスト分析を行います。
報告書の作成
分析結果に基づいて、報告書が作成されます。報告書には、分析結果、サンプリング箇所、具体的な素材名、アスベストの種類などが記載されます。

アスベスト分析調査会社の選び方

アスベスト分析調査会社を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。分析結果の信頼性や費用、対応の迅速さなど、様々な要素を比較検討し、ご自身のニーズに合った会社を選びましょう。
  • 資格の有無や実績・経験を踏まえた、分析機関の信頼性。
    ホームページやパンフレット等に具体的な情報が公開されているかどうかも信頼性を見分けるポイントです。
  • 安すぎる価格には要注意。
    費用が安すぎる場合は、分析の質が低く正確な結果を得られない可能性があります。
  • 対応の迅速さ・丁寧さ。
    担当者の対応が良い会社は、分析結果の説明も分かりやすく、安心して依頼できるでしょう。
  • 報告書の内容はわかりやすく、必要な情報がまとまっているか
    必要な情報の記載の有無や、写真や図表などを用いて視覚的に分かりやすい報告書を作成してくれるかを確認しましょう。
そこで弊社では、アスベスト分析会社の選び方として費用・納期・品質・サービスの30項目で徹底比較した資料を提供しています。

単なる一覧表ではなく、重みづけと採点に基づいたスコア化により、自社のニーズに合わせた最適な分析会社の選定が可能です。
また、実際に利用しないと見えてこないような評価ポイントも含めており、社内の稟議資料としてもそのまま活用できますので、是非ご活用ください。
<比較表イメージ抜粋>

よくある質問まとめ

最後に、アスベスト調査・分析に関してお客様からよくいただく質問をまとめました。

2006年9月1日以降着工の物件でも、「書面」調査は必要?​
その際も資格者が行う必要があるの?

はい、必要となります。​
着工年月日を確認する工程も書面調査の一部となります。尚、着工年月日の確認のみであれば建築物石綿含有建材調査者の資格者は必須ではありません。

ビスをインパクトドライバーで固定するのみの作業は、「軽微な作業」という認識で事前調査せずに施工して問題ない?

釘の固定や抜く等、石綿が飛散する可能性がほとんどないと考えられる極めて軽微な作業については不要です。​電動工具等を用いて、石綿等が使用されている可能性がある壁面等に穴を開ける作業は、事前調査を行う必要がございます。​

参考URL:石綿障害予防規則の解説 P.2-3

サンプル試料はどれくらい採ればいいの?

分析可能な試料の大きさは、おおむね5cm角程度のサイズが必要です。
また、採取場所が躯体の際には鉄骨や梁に当たるまで採取してください。

どれくらいの期間で結果をもらえるの?

会社によって異なりますが、約1~2週間程です。
弊社では、最短1日で結果を出す1DAYプランから、コストを抑えたLプランまで幅広くメニューを提供しております。

分析結果の”速報”とは何?

アスベスト分析結果を、報告書無しで含有有無のみ速報として結果を報告することです。
弊社は、速報はございません。但し、弊社の分析完了時の報告書提出のタイミングが他社様の速報と同等とご理解ください。
一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上の解体・改修工事の場合、解体・改修工事に着手する14日前までに調査結果を労働基準監督署に電子システムで報告する必要があり、正確な分析結果報告書が必要です。​

分析調査では、どの程度の割合で含有していると判定されるの?

建材の種類にもよりますが、デイラボで分析した検体で含有と判断されたものは全体の2~3割程度であり、残りの7~8割については含有なしという結果になっております。
​弊社では、御商談のタイミングとなりましたら、建材別の含有率も可能な範囲で開示することも可能です。

アスベストが見つかった場合は、どうすればいい?

アスベストが見つかった場合は、除去工事が必要となる場合があり、除去工事は、専門の業者に依頼する必要があります。除去工事の費用や期間は、アスベストの種類や量、建物の状況などによって異なります。
弊社では、御商談のタイミングとなりましたら、付き合いのある除去工事の会社様をご紹介することも可能です。

分析する検体が大量の場合、複数の分析機関を利用するのが一般的?
通常、どれくらいまで受け付けてもらえるの?

各分析機関で分析能力に差があるため、納期遅延などのリスクヘッジのために分散発注することは考えられます。
ただし、分析結果報告書の様式がばらけてしまうため、それらを取りまとめる際に注意が必要です。
デイラボでは大規模な物件でも対応できるキャパシティを有しております。​

石綿含有建材の分析依頼を行うとき、分析者として必要な技量や資格として最適な分析会社の選定方法を教えてほしい。

2023年10月1日より、調査だけでなく分析を行う際にも資格が必須という状況となっております。​よって、要件を満たす資格者が在席していることが必須条件になります。​
実際に分析施設を見学し、十分な分析能力を有しているかどうか確認することも重要です。​

デイラボでJIS-1分析について多数の資格者数が在席しており(国内最大級)、ラボ見学もお気軽にご相談ください。
昨今、自社にラボも分析者も無い状態で分析会社を名乗る会社も増えております。​

後々のトラブル回避のため、施設、及び資格者の確認を強く推奨いたします。

(2024年10月時点)

まとめ:アスベスト調査・分析は信頼と実績のデイラボへ

本記事では、事前調査から分析までの流れ、JIS規格に基づいた分析方法、依頼方法、そして業者選びのポイント等を解説しました。建物の築年数や状況に応じて適切な調査・分析を行うことが重要であり、専門家の知見を活用することで、より正確で信頼性の高い結果を得ることができます。

安心して調査・分析を依頼できるよう、実績豊富な専門業者を選びましょう。
アスベストに関して何かご不明な点等ございましたら、是非株式会社デイラボにお問い合わせください。
<調査結果報告書 サンプル>
<分析結果報告書 サンプル>
また当社では、アスベスト分析業務だけでなく、貴社社員・協力業者様向けのアスベスト事前調査についての勉強会なども行うことも可能です。

1時間程度のお時間を頂き、法改正で変わったこと/今後対応しなければいけないこと/発注者様への説明/解体や修繕等の工事時に気を付けなければならないことなどをお話させて頂きます。
対面でもZOOMなどでのウェビナーでも対応可能ですので、全国どのエリアのお客様でもまずはお気軽にお問合せください。
また、このような情報も含め、アスベストに関する最新情報をメールマガジンとして配信も行っております。

※配信対象は、お取引を頂きましたお客様に加え、お見積りを提出させていただきましたお客様も対象となりますので是非一度お問い合わせいただければと思います。