【法改正対応】アスベストの事前調査で必要な分析は?手法や業者選びのコツを解説

本記事の要約

  • アスベストの事前調査における分析はJIS A 1481群で定められた手法から選択する必要がある
  • アスベストの事前調査として必須なのは「定性分析」(JIS A 1481-1、JIS A 1481-2)
  • 実際に多くの現場では層ごとの分析が可能なJIS A 1481-1が用いられている
  • アスベストの分析は専門的な資格を持った分析者が行うことが必須(令和5年10月より)
  • 日本環境測定分析協会認定最難関資格であるアスベスト分析インストラクター保有者がいる分析機関への依頼が安心
令和4年4月の法改正により建築物等の解体・改造・補修に伴いアスベストの事前調査が義務化されました。令和5年10月には運用がさらに厳格化され、業界においてアスベスト関連の対応への知識は極めて重要になっています。

一方、アスベスト事前調査における分析を外部に依頼するにあたっても、分析方法の種類が多岐に渡り、どの業者にどの分析を依頼すればよいのか迷われる方も多いのではないでしょうか?実際、デイラボにも多くの業者様から「何からすればよいかわからない」「何を依頼すればよいかわからない」とご相談・お問い合わせをいただきます。

そこで、本記事ではアスベストの事前調査における分析について、種類ごとの内容を比較して解説しながら、具体的にどのようなサービスを選択すべきなのか、またどういった機関に分析を依頼するべきなのか解説します。

記事を読むことでアスベストの事前調査における分析について基礎知識が網羅でき、適切な分析方法、分析機関選択のための知見が得られますのでぜひご一読ください。

アスベストの分析には「定性分析」が必須

アスベストの分析は大きく分けると「定性分析」と「定量分析」の2つがあり、このうち必須で求められるのは定性分析です。

 ・定性分析:アスベストの有無、有りの場合はその種類を確認するための分析
 ・定量分析:アスベストが具体的に何%含まれているかを分析する

従って、定性分析においてアスベストが含まれていないことを確認できれば必然的に定量分析は不要であり、定量分析は必要に応じて適宜活用する位置付けと言えます。

法律で定められた要件を満たすためには「定性分析」が必須である点をまず抑えましょう。

石綿が検出されても定量分析は必須ではない

仮に定性分析の結果石綿が検出されたとしても定量分析を行うことは義務化されてはいません。

石綿が含有されていることが判明した場合求められるのは、アスベスト含有建材としての適切な処理。定量分析はあくまで補助的な指標として、必要と感じられた場合に活用する形で問題ありません。

JIS A 1481-1は、おおよその濃度範囲(「0.1~5%」、「5~50%」、「50~100%」)を報告できますので、法に定められた義務を履行する上でも、安全に作業を進める上でもJIS-1による定性分析で十分な水準を満たすと言えます。

石綿含有建材の処理については以下のリンクをご参照ください。
【厚生労働省】:建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル

アスベストの分析方法の種類と特徴

アスベストの分析方法の種類および特徴について簡単に解説します。分析の手法は以下に解説するJIS A 1481群の5種類の中から選択することが必須です。
また、定量分析を行うには、まず定性分析を行う必要があります。

【定性】JIS A 1481-1

JIS A 1481-1(以下 JIS-1)は偏光顕微鏡および実体顕微鏡を用いて分析対象の形態、光学的特性を確認することにより石綿の有無を分析する方法。対象が層状になっている場合、層ごとの分析が可能です。

【定性】JIS A 1481-2

JIS A 1481-2(以下 JIS-2)はXRD(X線回折装置)および位相差分散顕微鏡を用いて石綿の有無を分析する手法。分析にあたって対象物を粉砕する必要があるため、JIS-1と異なり層別の分析は困難です。

【定量】JIS A 1481-3

JIS A 1481-3(以下 JIS-3)はXRD(X線回折装置)を用いて検量線作成と基底標準吸収補正法と呼ばれる手法を用いて分析対象の石綿含有率を調べる方法です。

【定量】JIS A 1481-4

JIS A 1481-4(以下 JIS-4)は直接重量法と偏光顕微鏡によるポイントカウント法を用いた繊維計数によって分析対象の石綿含有率を調べる方法です。

【定量】JIS A 1481-5

JIS-3の国際規格化(ISO22262-3)の過程で発展改良され、JISにフィードバックされた方法です。
仮に定量分析を行う場合にも、その前に必ず定性分析を行う必要があります。
更に、各規格には定性→定量に進む組み合わせがあり、JIS-2に比べJIS-1の方が定量分析の選択肢は広がります。

アスベスト分析で実際に用いられている分析手法の比率

現状、実際に解体・補修工事にあたって事前調査における分析で用いられている手法の大半がJIS-1による定性分析です。先述の通り、法律で定められた義務をクリアするにあたっても実際の作業の安全に配慮する上でも定性分析を行い、石綿が検出された場合は必要な措置を講ずれば十分です。

定性分析のうち層ごとの分析が可能なJIS-1によって行うのが望ましいと言えるでしょう。実際、デイラボにご依頼いただく分析も全体の98.4%がJIS-1による分析です
デイラボではJIS-1分析に特化しており、精度の高い分析を検体到着後(持ち込みもしくは郵送)最短24時間で実施し、結果が出たら即時メールで報告を行います。
※速報ではなく、最終的な結果報告となります。

アスベストの分析には分析者の能力も求められる

令和4年現在、アスベストの分析は無資格者でも実施可能ですが令和5年10月以降は有資格者による実施が必須となります。これに伴い、委託する分析機関の分析者側の能力にも一定のバロメータが求められます。

具体的には、「分析調査講習を受講し、修了考査(学科講習、実技講習)に合格した者」又は以下いずれかの条件を満たす分析者です。
  • 公益社団法人日本作業環境測定協会 が実施する「石綿分析技術評価事業」により認定される Aランク若しくは B ランクの認定分析技術者又は定性分析に係る合格者
  • 一般社団法人日本環境測定分析協会 が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修(建材定性分析エキスパートコース)」の修了者
  • 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性分析技能試験(技術者対象)合格者」
  • 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「アスベスト分析法委員会認定 JEMCAインストラクター」
  • 一般社団法人日本繊維状物質研究協会 が実施する「石綿の分析精度確保に係るクロスチェック事業」により認定される「建築物及び工作物等の建材中の石綿含有の有無及び程度を判定する分析技術」の合格者
「日本環境測定分析協会認定アスベスト分析インストラクター」が要件を満たす資格の中でも最難関であり、当該資格者が在籍している機関に分析を依頼するのが理想と言えるでしょう。

デイラボには日本環境測定分析協会認定アスベスト分析インストラクター15名のうち3名が在籍しています。

資格者の数からもJIS-1による分析が主流となっている

現在新規で資格を取得する人数を比較しても、アスベストの分析に用いられる手法はJIS-1が主流になっていることがわかります。

日本作業環境測定協会が公開している第15回石綿分析技術評価事業実施結果報告書 では以下の実績が報告されています。
・評価区分1 (JIS-1 ,Aランク相当)の合格者:240名
・評価区分3(JIS-2,JIS-3)のA・Bランク合格者:149名

JIS-1の分析が今後の現場のニーズに合致しており、対応する資格取得を目指す方が増えている傾向が反映されたものと言えるでしょう。

まとめ:アスベスト分析は適切な方法、分析機関で

建築物等の解体・改造・補修に伴うアスベストの事前調査は令和4年4月から義務化され、令和5年10月以降はさらに要件が厳格化されます。

改正法に定められた義務を遵守する上でも、現場での作業の安全性を確保する上でも適切な分析方法、具体的にはJIS-1を用いて、信頼のおける有資格者の在籍する機関で分析を行うことが必須と言えるでしょう。

今回解説した内容も参考に、適切な分析を適切な機関にご依頼ください。


デイラボでは、業界最高クラスの高性能機器を用い、2名以上の資格者がクロス分析で行なった高精度な分析を実施。JIS-1の手法を用いるため、層別の石綿の含有有無が確認できます。

分析レポート(メールにて送付)は試料の外観写真・検体の断面写真・層別の分析結果を1枚にまとめた非常にわかりやすい形で提示できることも大きな特徴です。

これまで20,000検体以上の分析を行い、お客様から満足のお声を頂いています。さらに、社外の資格制度とは別に、デイラボでは社内独自の分析技術者の資格制度を別途設け、技術向上に向けたミーティングを定期的に実施するなど、すべての分析員が高い技術水準を維持できるように、日夜研鑽をしております。分析の品質については多くのお客様よりご評価をいただいております。

また、急に分析が必要になり、通常の分析では工期が間に合わないなどの問題にも対応が可能です。デイラボでは24時間で結果報告書を納品する「1DAYプラン」に加え、コストを抑えた「Lプラン」等、お客様のニーズに合わせたメニューを提供いたします。
アスベスト分析なら顧客満足度も高く、スピーディーさをお約束するデイラボにぜひご相談ください。
弊社では、アスベスト分析業務だけでなく、貴社社員・協力業者様向けのアスベスト事前調査についての勉強会なども行うことも可能です。

1時間程度のお時間を頂き、今回の法改正で変わったこと/今後対応しなければいけないこと/発注者様への説明/工事時に気を付けなければならないことなどをお話させて頂きます。
対面でもZOOMなどでのウェビナーでも対応可能ですので、まずはお気軽にお問合せください。
また、このような情報も含め、アスベストに関する最新情報をメールマガジンとして配信も行っております。

※配信対象は、お取引を頂きましたお客様に加え、お見積りを提出させていただきましたお客様も対象となりますので是非一度お問い合わせ頂ければと思います。