モルタルとは?~特徴や類似商品、アスベストについて解説!~
本記事の要約
- モルタルとは、土間の仕上げ材や外壁の下地材、コンクリートブロックやタイルを施工する際の目地材として身近な建材である。
- モルタルの使用用途は多岐に渡り、混和剤などを用いて用途に応じて様々な物質が添加されていることがある。
- モルタル自体にはアスベストは使用されていないが、混和剤にアスベストが使用されていたことが確認されている。
すべての工事においてアスベスト調査が必要
大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」※1となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要※2となりました。 ※1 調査の対象を外れる要件もあります(こちらの記事を参照) ※2 【よくある誤解!】100万円以下の工事でもアスベスト調査は必須です!
モルタルは左官材料として広く使用されている建材です。 本記事ではモルタルとはどのような建材なのか、種類やアスベストの含有について解説します。
モルタルとは?
モルタルは土間の仕上げ材や外壁の下地材、コンクリートブロックやタイルを施工する際の目地材として身近な建材です。
ここではモルタルの定義、セメントやコンクリートとの違い、用途について解説します。
モルタルとは、「セメント + 砂(細骨材) + 水」を混ぜ合わせた建築材料です。セメントと砂は重量比で1:2から1:3の割合で混合します。 ここでの砂 (細骨材) というのは、直径5mm以下のもののことを言います。ちなみに、粒径5mm以上の粒が全体の85%以上含まれる骨材を粗骨材、粒径5mm以下の粒が全体の85%以上含まれている骨材を細骨材といいます。 骨材には、セメントが固まる際に発生する熱や、収縮を抑制する役割があります。 モルタルに用いられる細骨材には、主に川砂や山砂が使われています。特に川砂は粒の大きさが他の骨材に比べ揃っており、塩分の含有量が少ないため、良質な骨材とされています。 ベースとなる粉末状のセメントは、水と混ぜるとペースト状になり、時間が経つと固まるという特徴があります。ペースト状なので施工性がよく、さまざまな形に成形することが可能です。
モルタルとセメント、コンクリートの違い
一般的にはセメントといえばポルトランドセメントを指します。ポルトランドセメントはクリンカと呼ばれる石灰石と粘土を混ぜて焼いたものと石膏を混合したものです。 ポルトランドセメントには普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫塩酸ポルトランドセメントがJISに規定されています。 その他、混合セメントと呼ばれるクリンカと石膏に混合材料を混ぜたものや、特殊セメントと呼ばれるものがあります。 セメントは用途や使用条件により、種類を選定しますが、一般的な建築工事に使用されているセメントはほとんどが普通ポルトランドセメントです。 セメントは骨材と水を混ぜ合わせることにより接着剤のような役割を果たします。
コンクリートは「セメント+粗骨材+細骨材+水」を混ぜ合わせた建築材料です。 粗骨材の隙間に細骨材が入り、セメントと結合し固まることで高い強度を有しています。 コンクリートは強度が求められる基礎や柱、梁に使用されるため、調合や品質が厳重に管理されており、生コンクリート製造プラントで製造され、ミキサー車で建築現場に運搬されます。建築現場では型枠が組まれ、ポンプ車によって型枠の中にコンクリートを打設することで自由な形の構造体を造ることができます。 コンクリートはその特性として、圧縮力に強く引張力に弱いため、鉄筋により引張力を補強した鉄筋コンクリート造とすることが一般的です。
モルタルの用途
土間や壁の仕上げ材として使用されています。
金属製の鏝で表面を仕上げることで、平滑できれいな仕上がりになります。
ただし、モルタルの特性として、地震や大型車の通行といった振動や経年劣化に伴いひび割れを生じる場合があります。
幅0.1mm以下の微細なひび割れは特段問題ありませんが、幅が0.3mm以上のひび割れの場合には雨水の侵入により構造体に劣化が発生するおそれがあります。
ひび割れへの対策として、モルタルの下地にメッシュ状の補強材を施工する方法や、誘発目地を設け、それ以外の部分でのひび割れを防止する方法等があります。
外壁の塗装や内装の下地材として使用されています。 コンクリートは型枠の中にコンクリートを打設し、固めることで成形しますが、型枠の施工誤差等により表面には若干の不陸があります。 特に以前はせき板型枠という型枠が主流であったため、施工精度が低く、コンクリートを塗装や吹付けで仕上げる場合にはモルタルで下地を平滑にすることが必須でした。 また、タイルや石材を張り付ける際の下地材としてもモルタルが使用されます。
タイルや石張り、コンクリートブロックの目地材として使用されています。
コンクリートブロックを施工する際の目地は、一般的なモルタルが使用されますが、タイルや石張りの場合は目地専用のモルタルが使用されることが多いです。
目地に使用するモルタルの種類や、目地の施工方法により仕上がりの印象が変わります。
目地の施工方法には塗り目地や一本目地、眠り目地などがあります。
代表的なモルタルの種類
一般的なセメントと砂(細骨材)と水を調合したモルタルです。 安価で幅広く使用されています。
モルタルが固まる際の収縮を抑制したモルタルです。膨張剤が添加されているため、通常のモルタルと比べて硬化時の収縮が少なく、ひび割れしにくい特徴があります。 セメントモルタルよりも粘度が低く、鉄骨造の柱脚部分やコンクリートの隙間や亀裂の充填材として使用されています。 費用が高いため用途は構造体に関わる部分に限定されます。
セメントモルタルにポリマーを添加したモルタルです。ポリマーとは分子量の大きい重合体と呼ばれる分子で、ポリマーを添加することにより、コンクリートとの付着力が高い、乾燥収縮が小さい、施工性が良い、曲げ・引張強度が高い、劣化に対する抵抗が上がる等の利点を得ることができます。 コンクリートの施工精度が高い場合に、不陸や欠損部の下地調整に薄塗りで使用します。 近年の鉄筋コンクリート造の建物では、塗装や吹付け、内装材の下地調整材にはポリマーセメントモルタルが使用されるケースが多いです。 これはコンクリートの施工精度の向上により、薄塗りによる下地調整が可能になったためです。
セメントの代わりに樹脂を用いたモルタルです。 接着力が高く、弾性があり、ひび割れに強いためコンクリートの補修などに使用されます。 下地調整材としては、ポリマーセメントモルタルが薄塗りで使用されるのに対し、樹脂モルタルはコンクリートの欠損部の補修など、立体的な成形が求められる箇所に使用されます。 劣化部の補修に用いられるカチオン樹脂モルタルはプラスの電荷を帯びていることにより電気的な付着力を有しており、一般的なモルタルでは浮きや剥離が生じてしまうタイルなどにも付着することが可能です。 また、防水性に優れているため、モルタル調の水回りに使用されることも多いです。
モルタルと混和剤
モルタルの性能や施工性を向上させるために、混和剤を用いることがあります。
混和剤には次のようなものがあります。
セメントモルタルの接着力を増強するものです。 下地に塗布するタイプのものとセメントモルタルに混和するタイプのものがあります。 接着力の増強意外にも作業性の向上、硬化不良の防止などの機能があります。
セメントモルタルには透水性があるため、防水性能を向上するために使用します。 セメントモルタル仕上げのバルコニーや庇の天端、鉄筋コンクリート造の外部建具回りの充填材等に使用します。
施工性を向上させるために使用します。 保水材を混和することにより、鏝による作業効率が向上します。
セメントモルタルの特性である、振動や収縮によるひび割れを抑制するために使用します。 セメントモルタルに微細な繊維を混和するタイプのものが主流です。
セメントモルタルに粉末の顔料を混和することでセメントモルタルに着色します。 着色をする場合は、発色をよくするために、通常のセメントに変えて白色のセメントを用いることもあります。
モルタルと石綿(アスベスト)
本来、セメントモルタルはセメントと砂(細骨材)が材料であり、アスベストは含有されていません。 しかし、モルタルの性能や施工性を向上させるための混和剤に、アスベストが使用されていた時期があります。 2004年10月に「労働安全衛生法施行令」が改正され、アスベスト含有建材、摩擦材、接着剤等10品目の製造等が禁止されましたが、その直前の2004年9月まではアスベストを含有する混和剤が製造されていました。 また、「無石綿」、「ノンアスベスト」等と表示されていた混和剤のうち、蛇紋岩を原料とするものに、アスベストが含有されていることが明らかになったこともあります。
左官工事等において作業性の向上を図るために、蛇紋岩を粉砕したモルタル混和材が用いられることがあるが、(独)産業医学総合研究所等において、市販されているいくつかの蛇紋岩系モルタル混和材について、鉱物の結晶水の脱水温度の違いを利用した微分熱重量法(DTG法)により分析を行ったところ、「無石綿」、「ノンアスベスト」等と表示された商品の中に、相当量の石綿を含有するものがあるとの結果が出た。
《 左官用モルタル混和材中の石綿の含有について- 厚生労働省発表 平成16年7月2日 》
また、コンクリート下地の不陸や欠損部の補修に用いる下地調整材に、アスベストを含有する建材が使用されていた時期があります。
下地調整材C(セメント系フィラー)では1970年~2005年、下地調整材E(樹脂系フィラー)では1982年~1987年の間、アスベストを含有する建材が製造されていました。
まとめ
建物の解体や改修に際しては、事前にアスベストを含有する建材の使用状況を調査することが義務付けられています。
事前調査では、設計図書や仕様書等から使用されている建材の種類や製造年等を確認する書面調査と、現地で設計図書等と照合し、アスベストの含有が疑われる建材等を確認する現地調査により、アスベストを含有する建材の有無を判断します。
しかし、モルタルの混和剤や下地調整材は、設計図書や仕様書にメーカーや名称が記載されていない場合も多く、その種類も多いため、事前調査によりアスベスト含有の有無を判断することが難しい場合も多いです。
事前調査によりアスベスト含有の有無を判断できない場合は、建材の試料を採取し、分析を行うことでアスベスト含有の有無を判断することが可能です。
工事に携わる事業様に置かれましては、本記事をご一読頂き、法令を遵守し企業活動を行って頂けますと幸いです。
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解体・改修工事におけるアスベスト事前調査は原則すべてのものが対象です。
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