【アスベスト】試料採取の仕方で工事費用が増減する事例のご紹介
本記事の要約
- 事前調査・採取の方法によって、その後の工事にかかる費用が大きく変動するケースがある
- 特に仕上塗材の改修履歴には注意が必要
すべての工事においてアスベスト調査が必要
大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」※1となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要となりました。 ※1 調査の対象を外れる要件もいくつかございます(こちらの記事を参照)
事前調査を行う中で、検査/分析を行い、対象建材に対してアスベストの有無を判定する分析調査があります。分析調査では、建材の状態や改修履歴など分析に影響を及ぼす要素がいくつかございます。
本記事では、試料採取の仕方で除去工事の費用が増減する事例について解説いたします。
※本記事に記載している建材以外にも、アスベスト除去工事もしくはみなし工事の場合、通常の解体・改修工事費用に対して費用が大きくなるケースがございます。
採取方法で工事費用が変わる事例をご紹介
以下のビルの図をもとに解説します。
図のビルは全面同じ色の外装塗材で仕上げられており、見かけ上は一様に同じ建材だと思われます。 仕上塗材については、大きく以下の評価方法があります。 パターンA:それぞれの面で採取した試料を、1検体として評価する (本来は、施工のムラ・不均一の恐れを回避するのを目的とするやり方) パターンB:それぞれの面を別々の検体として採取し、それぞれを個別に評価する
※いずれも同一仕上がり(見かけ上の色や模様が同じの意)が前提であり、色や模様が違う場合や施工面積が広大な場合等は、別建材として扱う必要があります。
※尚、デイラボでは異なる建材と判断した場合には、分析前に一度お客様に確認するフローとなっております。
どちらの方法で仕上塗材を判定するかは、目視調査を行った調査者の判断にゆだねられており、その責任は調査者にあります。 このビルの場合、【パターンA:それぞれの面で採取した試料を、1検体として評価する】という考えで試料採取・分析を行うことも調査者の判断により可能です。 ただし、このようなケースで注意したいのは、外壁の改修履歴です。 多くの場合、ビルの正面や周囲から目に入る面などは見栄えを良くするために外装塗材の上塗や改修工事を行っていることが多く、この際に使用した仕上塗材にアスベストが含まれていた場合に以下のような状況が発生する可能性がございます。
(正面)含有あり;外壁上塗りによる改修履歴あり(仕上塗材にアスベスト含有)
(側面)含有なし;竣工当初のまま
(背面)含有なし;竣工当初のまま
要約すると、目立つところ・見えるところは改修(上塗)を行っており、それ以外はそのままという状態です。且つ、見た目は同じような仕上げにすることが基本であり、見た目では判断が出来ないことが多いです。
こういった状況における採取・分析の仕方による違いを見ていきましょう。
A:各面で採取した試料を1検体として評価
例えば、正面・側面×2・背面の仕上塗材を採取し、それらを1検体として分析を行ったとします。 背面・側面が不含有という結果であっても、1検体としての取り扱いのため、最終的な分析結果としては【アスベスト含有あり】となります。 ※「アスベスト含有なし」という結果では、正面を対策せずに工事してしまうため この場合は、仕上塗材の改修・撤去工事については、全面をアスベスト対策工事として扱うこととなります。
B:各面を別々の検体として採取し、それぞれを評価
同じ例で考えてみましょう。 正面・側面×2・背面の仕上塗材を採取し、それらを別の検体として4検体で分析を行ったとします。 その場合、パターンAの検査結果とは異なり、 それぞれの面に対して分析結果が提示されるため、アスベスト対策工事としては【前面のみ】で行うことが可能となります。 一般的にアスベスト分析調査費用に比べ、除去・廃棄費用のほうが高額となるケースが多いため、トータルコストとしては抑えられる形になります。
また、本事例のように採取を行わず、1面のみ採取を行い、背面のアスベスト含有建材を見逃すケースも考えられます。アスベスト事前調査にて、アスベスト含有建材を見逃し、それらを一切対策せずに工事を行ってしまった場合、作業従事者や周辺環境の方々にアスベスト暴露の危険がございます。事前調査を行われる皆さまにつきましては、含有懸念建材の見逃しの無いようにお願い申し上げます。
外壁の検体採取における注意点
上記説明の通り、外壁におけるアスベスト分析調査においては上塗り等の改修履歴に注意をする必要がございます。 検体採取の際には、表面の塗材のみならず下地調整材含め全層を採取することが重要です。 ※デイラボでは追加料金無しで層別分析を提供しております。 以下の採取動画をご参考にしていただければと思います。
まとめ
以上が、事前調査者の判断によりその後のアスベスト除去・対策工事の費用が大きく変動する事例となります。本記事では仕上塗材を例に挙げましたが、これだけでなく様々な建材について当てはまる事例と言えます。
アスベスト事前調査を行う際には、調査者はその責務を以て、書面調査/目視調査を行い、含有懸念建材の施工範囲を特定しなければなりません。
一見、見かけ上同一建材に思えたとしても、工事の履歴や建物の用途、そして建物自体の様相などから適切な評価を下す必要があります。
デイラボでは、アスベスト分析50,000検体以上の実績があり、層別分析も追加料金無しで承ります。アスベストの分析調査を選択される場合には是非デイラボにご相談ください。 24時間でアスベスト分析結果報告を行う「1DAYプラン」をご用意しております。また、計画的なアスベスト分析には、納期を調整することで費用を抑えられる「S(ショート),M(ミドル),L(ロング)」等、お客様のニーズに合わせたプランを提供しております。 受付は全国対応しており、関東圏のお客様においては直接持ち込み頂くことも可能です。 国内最大級ラボを構えており、大量検体の分析を行うことも可能です。 アスベスト分析を検討される場合は是非デイラボまでお問い合わせください。
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