【アスベスト事前調査】≪過去の事前調査結果がある≫場合も、追加の調査が必要なケースあり!?ポイントや方法を解説
- 1. すべての工事においてアスベスト調査が必要
- 2. 過去に行われた事前調査結果報告書が存在する場合のポイント
- 3. 過去に行われた調査結果報告書が存在する場合でも、新たな工事の場合は事前調査を行う必要がある理由や留意点
- 4. 理由・留意点①:改めて事前調査を行う必要はない、と規定されているがその条件に注意が必要です。
- 5. 理由・留意点②:過去に調査が行われていても、新たな工事の場合、事前調査結果等の届出は必須です。
- 6. 理由・留意点③:新たな工事の対象部位・材料について、調査が行われていない場合がある。
- 7. 理由・留意点④:2008/02/05以前に行われた石綿使用の有無の事前調査(分析調査)では、石綿6種類のうち3種類しか分析されていない場合があり、6種類の分析結果が確認できない場合は再調査が必要
- 8. 過去に行われた事前調査結果を受領した場合の工事着工までの大まかな流れ
- 9. まとめ
- 10. アスベスト分析調査はデイラボへ
すべての工事においてアスベスト調査が必要
大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」※1となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要※2となりました。 ※1 調査の対象を外れる要件もいくつかございます(こちらの記事を参照) ※2 【よくある誤解!】100万円以下の工事でもアスベスト調査は必須です!
本記事では、工事着工前に行う石綿使用の有無の事前調査において、発注者様より【過去の事前調査結果報告書】を提供頂けた場合の、留意点や手続きなどを解説いたします。
過去に行われた事前調査結果報告書が存在する場合のポイント
まずは、重要なポイントを以下に記します。
- 過去に行われた事前調査結果報告書があっても、新たな工事の場合は、工事着工前に事前調査の結果等の届出を行う必要がある。 ※詳細については後に解説いたします。
- 過去の事前調査の結果を良く精査する必要がある。
- 過去の調査内容に不足があれば、追加の調査が必要である。
過去に行われた調査結果報告書が存在する場合でも、新たな工事の場合は事前調査を行う必要がある理由や留意点
まず、大前提として、石綿使用の有無の事前調査は
・書面調査(設計図書等からの調査)
・目視調査(実際の工事対象を目視で確認しての調査)
と大別され、いずれも実施することが義務となっています。
※目視調査までで石綿使用の有無について判断できない場合は、『分析調査』もしくは『含有みなしでの石綿飛散/暴露対策工事』に進みます。
(アスベスト含有みなし工事は、アスベスト除去工事と同等の扱いです。)
ここまでご理解を頂いた上で、前項にて挙げさせて頂いた
≪過去に行われた事前調査の結果≫を発注者様からご提供いただけた場合でも、新たな工事の場合は事前調査を行う必要がある理由や留意点について、解説いたします。
理由・留意点①:改めて事前調査を行う必要はない、と規定されているがその条件に注意が必要です。
第三条 第3項
前項の規定にかかわらず、解体等対象建築物等が次の各号のいずれかに該当する場合は、事前調査は、それぞれ当該各号に定める方法によることができる。
一 既に前項各号に掲げる方法による調査に相当する調査が行われている解体等対象建築物等 当該解体等対象建築物等に係る当該相当する調査の結果の記録を確認する方法
(以下、省略)
(上記の解説)
第1号について、過去において既に建築物についての石綿等の使用の有無に関する調査が行われている場合や、プラントの定期検査等により石綿等の使用の有無に関する調査が行われている場合等であって、これらの調査方法が、第3条第2項第1号及び第2号に規定する方法に相当する場合は、これらの調査結果の記録を確認することで足り、改めて事前調査を行う必要はないことを規定したものであること。
≪石綿障害予防規則の解説 P.4-5 ≫
上記の通り、石綿障害予防規則の解説では、過去に調査が行われている場合について規定する一文がございます。ただし、条件として<第3条第2項第1号及び第2号に規定する方法に相当する場合>と規定されており、この内容について理解をしておく必要があります。
第三条 第2項
前項の規定による調査(以下「事前調査」という。)は、解体等対象建築物等の全ての材料について次に掲げる方法により行わなければならない。
一 設計図書等の文書(電磁的記録を含む。以下同じ。)を確認する方法。ただし、設計図書等の文書が存在しないときは、この限りでない。
二 目視により確認する方法。ただし、解体等対象建築物等の構造上目視により確認することが困難な材料については、この限りでない。
≪石綿障害予防規則の解説 P.4 ≫
つまり、【建築物等における工事対象の全ての材料について調査を終えている場合のみ、追加の調査を行う必要はない】と規定されています。
理由・留意点②:過去に調査が行われていても、新たな工事の場合、事前調査結果等の届出は必須です。
事前調査の結果等の報告につきましては、以下の様に規定されています。
第4条の2(事前調査の結果等の報告)
【令和4年4月1日施行】
第四条の二 事業者は、次のいずれかの工事を行おうとするときは、あらかじめ、電子情報処理組織(厚生労働省の使用に係る電子計算機と、この項の規定による報告を行う者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)
を使用して、次項に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
一 建築物の解体工事(当該工事に係る部分の床面積の合計が八十平方メートル以上であるものに限る。)
二 建築物の改修工事(当該工事の請負代金の額が百万円以上であるものに限る。)
三 工作物(石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)の解体工事又は改修工事(当該工事の請負代金の額が百万円以上であるものに限る。)
≪石綿障害予防規則の解説 P.11-12 ≫
上記に規定の通り、届出は【調査ごとに行うものではなく】、【工事ごとに行うもの】として規定されております。 また、届出の内容についても以下のように調査内容だけでなく、工事内容についても報告が義務図けられているため、工事ごとに報告が必要になります。
第4条の2(事前調査の結果等の報告)
【令和4年4月1日施行】
(略)
2 前項の規定により報告しなければならない事項は、次に掲げるもの(第三条第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げるものに限る。)とする。
一 第三条第七項第一号から第四号までに掲げる事項及び労働保険番号
二 解体工事又は改修工事の実施期間
三 前項第一号に掲げる工事にあっては、当該工事の対象となる建築物(当該工事に係る部分に限る。)の床面積の合計
四 前項第二号又は第三号に掲げる作業にあっては、当該工事に係る請負代金の額
五 第三条第七項第五号、第八号及び第九号に掲げる事項の概要
六 前条第一項に規定する作業を行う場合にあっては、当該作業に係る石綿作業主任者の氏名
七 材料ごとの切断等の作業(石綿を含有する材料に係る作業に限る。)の有無並びに当該作業における石綿等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法及び当該作業を行う労働者への石綿等の粉じんのばく露を防止する方法
3 第一項の規定による報告は、様式第一号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出することをもって代えることができる。
4 第一項各号に掲げる工事を同一の事業者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなして、同項の規定を適用する。
5 第一項各号に掲げる工事の一部を請負人に請け負わせている事業者(当該仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。)があるときは、当該
仕事の作業の全部について、当該事業者が同項の規定による報告を行わなければならない。
≪石綿障害予防規則の解説 P.11-12 ≫
理由・留意点③:新たな工事の対象部位・材料について、調査が行われていない場合がある。
過去に行われた調査が、これから行われる工事の対象部位・材料を全て調査しているとは限りません。①で述べた通り、受領した事前調査結果を精査して、工事内容に対し調査の不足(工事対象の材料を調査していない場合)があれば追加の調査を行う必要があると考えられます。
理由・留意点④:2008/02/05以前に行われた石綿使用の有無の事前調査(分析調査)では、石綿6種類のうち3種類しか分析されていない場合があり、6種類の分析結果が確認できない場合は再調査が必要
こちらについては、以下の通り厚生労働省より通達がなされています。
1 分析調査においては、対象をクリソタイル等の石綿に限定することなく、トレモライト等を含むすべての種類の石綿とすること。
≪基安化発第 0206003 号≫
平成20年2月6日
厚生労働省労働基準局 安全衛生部化学物質対策課長
受領した事前調査結果の中に石綿6種類のうち3種類しか分析されていない、且つ【石綿なしになっている】場合は、再調査が必要になります。(残りの3物質に対して分析が必要)
※石綿の含有が確認できている場合は、追加の調査は不要ですが対策工事が必要になります。
過去に行われた事前調査結果を受領した場合の工事着工までの大まかな流れ
≪過去に行われた事前調査の結果≫を発注者様からご提供いただけた場合でも、新たな工事の場合は事前調査を行う必要がある理由や留意点については、前段にて解説いたしました。 では、実際の工事着工までの流れはどのようになるのか、大まかではありますが以下に記します。
- 工事の依頼があり、石綿使用の有無の事前調査における情報提供にて過去の事前調査結果を受領する。
- 過去の事前調査結果を精査する。
ここからパターンが別れます。
パターンA
- 工事内容に対し、過去の調査結果に不足がない場合、目視調査を行い工事対象に相違がないことを確認する。
- 目視調査によって過去の調査結果と相違がないことが確認できた場合、過去の調査結果報告書を基に規模要件に応じて行政への届出(電子報告など)を実施する。
- 必要な義務・安全対策などを徹底した上で工事を実施する。
パターンB
- 工事内容に対し、過去の調査結果では不足しているため、続けて書面/目視調査を行い、工事対象の確認と必要に応じて<分析調査>もしくは<アスベスト含有みなし工事>を実施することを決定する。
- 新たに発生した調査部位・材料の結果を追加し報告書にまとめ、規模要件に応じて行政への届出(電子報告など)を実施する。
- 必要な義務・安全対策などを徹底した上で工事を実施する。
まとめ
ここまで、過去の石綿使用の有無の事前調査結果報告書がある場合の留意点やポイント、必要な考え方について解説いたしました。 その内容を大まかにまとめると以下の通りになります。
- 過去に行われた事前調査結果報告書があっても、新たな工事の場合は、工事着工前に事前調査の結果等の届出を行う必要がある。
- 過去の事前調査の結果を良く精査する必要がある。
- 過去の調査内容に不足があれば追加の調査が必要である。
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解体・改修工事におけるアスベスト事前調査は原則すべてのものが対象です。
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