- 調査現場では、建材の破損や接触、作業環境などに起因してアスベストが飛散する可能性があり、調査であってもばく露リスクは十分に存在する。
- アスベスト事前調査は、法令上明確な記載はないものの、除去作業に類似するばく露リスクを伴う業務とされており、健康診断の対象と考える必要がある。
- 安全対策は保護具の着用にとどまらず、作業方法や現場での判断、事前のリスク想定まで含めた総合的なリスク管理が重要である。
- 調査実務に不安がある場合は無理に行わず、経験や知識のある専門機関へ相談・依頼することが、安全性と確実性の確保につながる。
- アスベストの調査・採取・分析、基本的な体制づくりのサポートはデイラボへ!
「アスベスト事前調査は石綿作業従事者に対する健康診断の対象となるのか?」
本記事では、お客様からいただくことが多いこの疑問に対して、石綿障害予防規則に基づき、その具体的な判断基準を解説します。
本記事を通して、アスベスト事前調査は健康診断の対象となるのか、必要な場合に従事者の健康を守るためにはどのような対策が求められるのか、網羅的に理解することができるでしょう。
吸入してしまうと潜伏期間の長いアスベスト、数年後の大きな健康被害を未然に防ぐための知識をきちんと身につけていきましょう。
目次
石綿作業従事者の健康診断について

建物の解体や改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、アスベスト(石綿)含有の有無の事前調査を行うことが法的に義務付けられています。
そして、この建物の解体や改修工事においてアスベスト粉じんへのばく露が予想される作業に従事する作業者は、就業前に健康診断の受診が必要です。また、同種工事に引き続き従事する場合は、6ヶ月以内ごとに定期的な健康診断の受診も必要です。
では、この“アスベスト粉じんへのばく露が予想される作業に従事する作業者”とは具体的に何を指すのか、詳細を確認していきましょう。
➀健康診断の対象者とは
石綿作業従事者に対する健康診断の対象者は以下として定められています。
(1)石綿等を取り扱い、又は試験研究のため製造する業務に常時従事する労働者
(2)過去においてその事業者で、石綿等の製造又は取り扱い業務に常時従事したことのある在籍労働者
(3)(1)及び(2)の業務の周辺で、石綿の粉じんを発散する場所における業務(周辺業務)に常時従事する又は常時従事したことのある労働者(平成21年4月より追加)
引用:厚生労働省|石綿作業従事者に対する健康診断
上記の対象者の中に、アスベスト事前調査が含まれるのかは、一見すると明確に思えるものの、実際には解釈に迷う論点となっています。
では、実際にアスベスト事前調査はこれらの対象に含まれるのでしょうか。
②実はアスベスト事前調査も“対象”となる
結論、アスベスト事前調査はアスベスト粉じんへのばく露が予想される作業にあたり、健康診断受診の対象と考えられます。
法令上に具体的な記載があるわけではございませんが、最新の建築物石綿含有建材調査者講習テキストには下記の通り記載されています。
調査者の石綿調査時の石綿ばく露は、石綿含有建材の除去作業に類似する可能性があることから、6 カ月以内ごとに1回、定期に医師による健康診断を受けていなければならない業務と考えられる。
調査者を雇用する事業主はその結果を、当該調査者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から40 年間保存しなければならない。
引用:厚生労働省|建築物石綿含有建材調査者講習テキスト|3‐71
実際、当テキストには調査作業で予想される安全配慮に反する事例や実際の調査に当たっている人たちからの体験談も記載されており、アスベストへのばく露の危険性は十分に理解できます。
③調査作業で予想される健康被害の危険性
アスベスト事前調査における目視調査や採取などの現場作業は、さまざまな危険と隣り合わせの環境で作業を行うことになります。
下記のような事例は建築物石綿含有建材調査者講習テキストにも具体的に掲載されており、調査作業においてもアスベストへのばく露リスクが十分に想定されることが示されています。
| リスク区分 | ばく露につながる要因・内容 |
|---|---|
| 落下・破損による飛散 | 調査時の点検口や劣化部材の落下、吹付け材の崩落などは、建材の破損と同時にアスベストが空気中へ飛散するリスク有り。 特に劣化した建材は軽微な接触でも広範囲に飛散する可能性も。 |
| 保護具未着用による直接ばく露 | 見た目や油断により保護具を着用していない状態で作業を行うと、想定外の飛散時にアスベストを直接吸入するリスク有り。 |
| 密閉空間での濃度上昇 | 地下室や機械室など換気が不十分な環境では、粉じんが滞留しやすく、一度飛散するとばく露濃度が高くなりやすい。 |
| 不安定な姿勢による接触・飛散 | 無理な姿勢や不安定な足場での作業は、建材への接触や破損を招き、結果としてアスベストの飛散につながる可能性有り。 |
| 突発的な外的要因による飛散 | 思わぬ障害物により急な回避行動を取った際は、意図せず建材を破損させ、アスベストを飛散させるもリスク有。 |
| 作業環境による間接的リスク | 閉じ込め、暗所、転倒、警報作動などは作業の混乱や注意力低下を招き、不適切な行動を通じて結果的に飛散・ばく露に繋がる可能性有。 |
上記のように、アスベスト調査業務であっても除去作業と同様の意識を持ち、安全管理とばく露防止を両立させた対応が重要です。
アスベスト事前調査における安全対策とは

アスベスト事前調査でもアスベストへのばく露リスクは十分にあり、安全対策が欠かせないことがわかったところで、ここでは、ばく露リスクを最小限に抑えるための具体的な対策について解説します。
安全対策とは、保護具の着用だけで完結するものではありません。現場環境や作業方法、判断の仕方や意識によって、ばく露リスクは大きく変わります。
特に調査業務は「確認作業」として扱われがちな傾向にありますが、実際には建材への接触や破損、突発的な事象によってアスベストが飛散する可能性があり、一定のばく露リスクを伴う業務です。そのため安全対策は、実際の現場対応だけでなく、事前の想定や判断も含めて考える必要があります。
➀装備:適切な保護具の使用と事前準備
調査時には、状況に応じて防じんマスクや保護帽などの保護具の着用が求められます。
ただし重要なのは、単に着用することではなく、現場の状況に応じて適切に選定・使用することです。
特に下記が想定される場合は適切な措置を講じましょう。
- 建材の裏側に記載の情報を確認する場合
→原則、照明やコンセントなどの電気設備の取り外し等により行い、建材の取り外し等はできる限り避けましょう。
やむを得ず建材の取り外し等を行う際や分析調査のための試料採取の際には、呼吸用保護具の着用や湿潤化など、作業に応じて石綿則に基づく必要な措置を講じることが必要です。 - 天井裏の調査の場合
→吹付けアスベスト等天井上に堆積した粉じんが飛散しないよう十分注意が必要です。点検口を開ける際には呼吸用保護具の着用、点検口廻りを簡易的に養生する等の飛散防止対策を施す必要があります。 - 煙突の調査の場合
→当該建材が劣化し、その破片が煙突下部に落下している場合もあると考えられます。灰出口を開けるときなどこれらアスベストを含有する破片等を取り扱う場合も、石綿則の適用があります。
呼吸用保護具等の措置を確実に実施するとともに、廃棄物処理法に基づく措置や処分等が必要であることに留意しましょう。
上記以外にも事前にリスクを想定しておくことで、適切な対策を講じ不意なばく露の可能性を下げることに繋がります。
引用:厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課 環境省水・大気環境局環境管理課|建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル
②行動:ばく露を防ぐための作業方法
ばく露リスクは、作業中の「動き方」によって大きく変わります。
無理な姿勢や不安定な場所での作業は、転倒や建材への接触を招き、結果としてアスベストの飛散につながる可能性があります。
- 身を乗り出した無理な確認・採取
- 足場が不安定な状態での作業
- 状況確認をせずに建材に触れる行為
こうした行動を避け、どのように作業するかを意識することが、ばく露防止につながります。
③判断・体制:調査判断と専門機関への相談
現場の実務では、書面調査では確認できなかった状況においてどこまで採取を行うか等即座に判断が求められる場面があります。
しかし実務では、資格を取得したばかりや現場経験が少ないことで、判断に迷う場面も少なくないかと思います。
こうした状態で調査を進めてしまうと、必要な箇所を見落としたり、逆に不要な採取によってばく露リスクを高めてしまう可能性があります。
不安がある場合は無理に自己判断せず、経験や知識のある調査者や専門機関に相談・依頼することが重要です。
アスベスト(石綿)調査会社の選び方|失敗しないためのポイントとは?
近年、「安かったのでお願いしたら、調査内容が曖昧だった」「報告書の信頼性に不安がある」といったトラブルの相談が実際増えております。
専門会社へ依頼する際は、そのようなトラブルを防ぐべく信頼できるアスベスト調査会社を見つけることが大切です。本記事ではポイントをわかりやすく解説しておりますので、併せてご参照ください。
まとめ:アスベスト調査・採取・分析は信頼と実績のデイラボへ
本記事では、アスベストの事前調査は、石綿作業従事者に対する健康診断の対象と考えられる業務ということを解説いたしました。
これは、調査であってもアスベストの飛散やばく露のリスクを伴うことが前提とされているためです。
本来、事前調査は工事に伴うアスベストの飛散やばく露を防ぐために行われるものであり、調査中にアスベストが飛散したり、調査者がばく露してしまっては本末転倒となります。
そのため、粉じんを飛散させないこと、そして調査者の吸入を防ぐことを前提とした対応が重要となります。
リスクの程度を正しく理解し、状況に応じた保護具の選定と使用、適宜専門機関への依頼も視野に入れて取り組みましょう。
弊社では事前調査一式、採取、分析だけといった依頼もお受けすることが出来ますので、是非ご相談ください。その他アスベストに関して初歩的な質問でも構いません。会社のアスベスト対策に関しての体制づくりも一からサポートいたします。
ご相談・ご不明な点等ございましたら、お気軽に株式会社デイラボまでお問い合わせください。
TIPS「石綿とは?」
「石綿」とは「せきめん」「アスベスト」とも呼ばれており細長い形の天然の鉱物繊維である。
優れた特性を持っている反面、微細なものがいったん空気中に放出されると、消滅することなく長期浮遊し、人がそれを吸い込むと病気になる危険性が高まることから、石綿ばく露を防止することは極めて重要な課題となっている。
引用:建設業労働災害防止協会|石綿作業主任者技能講習テキスト
<調査結果報告書 サンプル>


<分析結果報告書 サンプル>

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