「ノンアス」「ゼロアス」と書いてあるのに分析結果が"含有"?

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2025.12.19

「ノンアス」「ゼロアス」と書いてあるのに分析結果が”含有”?
  • アスベストの規制値は段階的に強化されてきたため、建材資料などの「ノンアス」「ゼロアス」という表記は、現在の基準では「含有」の恐れがある。
  • 実際にデイラボでは、資料上は非含有とされていた建材からアスベストが検出された実例あり。
  • 基準が変わっているという認識が無いまま判断すると、作業区分の誤設定や届出漏れ、工期遅延、責任問題など、現場に多様なリスクが生じる恐れがある。
  • 現行基準で安全に判断するためには、表記を鵜呑みにせずアスベスト分析を行い、確実な結果を入手することが大切。
  • アスベストの調査・採取・分析、基本的な体制づくりのサポートはデイラボへ!

アスベスト(石綿)は、社会環境や健康影響の知見が進むにつれ、段階的に規制が強化されてきた物質です。建設業界に携わる方であれば、「昔と今では基準が違う」という感覚はお持ちかもしれません。まさにこの規制値の変遷こそが、現場で誤解を生みやすいポイントとなっています。

本記事では、過去の資料や設計図書に「ノンアス」「ゼロアス」という記載があったとしても、アスベスト含有の恐れがあるということをデイラボの実例を交えて解説していきます。
過去は規制値以下であったとしても、現在の規制値で判断すると“含有”になる可能性が十分にあり得えます。

本記事を通して、当時の規制値以下=現在の規制値以上の可能性があるということを改めて意識し、工事を適正かつ安全に進めましょう。


アスベスト規制の変遷

今でこそ重い健康被害を招く「特定の有害物質」として厳しく扱われるアスベストですが、その規制は最初から明確な危険認識に基づいていたわけではありません。
1960年代、日本が高度経済成長に向かう中で整備されたのは、粉じんによる健康被害を抑えるための一般的な予防策でした。
後にアスベストが深刻な健康リスクを持つことが判明し、規制値は段階的に強化されていくことになります。
以下の表ではアスベストの規制の変遷をまとめ、過去の“非含有”が現在の“含有”に該当し得る背景を理解するうえで重要なポイントとなります。

<アスベスト規制の変遷>

上記の通り、現在では質量で0.1%を超えて石綿を含有する石綿含有建材の使用が全面禁止されています。そして、解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に​解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、​石綿(アスベスト)含有の有無の調査をすることが義務付けられています。​


「ノンアス」表記に反した“含有”事例

建材にアスベストが含まれているかどうかは、最新の規制値に基づく分析調査によって初めて正確に判断できます。
デイラボでも、「ノンアス」と資料に表記されていた建材を分析したところ、アスベストが検出されたケースが実際に発生しています。具体的には、ケイ酸カルシウム板より、クリソタイル0.1-5%、アモサイト0.1-5%のアスベスト含有が確認されました。
資料上ではアスベスト非含有とされているため、現場としては安心してしまいがちですが、分析は“現在の最新規制値”で行わなければ、正確な判断はできないという典型的な例です。

<実例>

分析結果報告書

顕微鏡写真

対象建材

※上記の内容は、お客様の了承を得たうえで、個人・現場が特定されない形で掲載しています。

今回の実例は、資料上では非含有と判断されていた建材であっても、現在の基準で分析すると含有となるケースが実際にあることを示しています。これは特定の現場だけに限らず、年代の古い建築物では幅広く起こり得る問題です。


誤判断から生じるリスク

冒頭で説明したようにアスベストの規制は段階的に強化されてきました。そして実例のように、当時の規制値で「非含有」と扱われていた建材であっても、現行の厳しい基準では「含有」に該当するケースが実際にございます。
こうした誤判断によって工事を進めてしまうと、現場ではどのような問題が起こり得るのでしょうか。
以下では、過去基準を前提に判断した場合に実際に発生し得る具体的なリスクを整理してご紹介します。

想定される状況過去基準で「非含有」と判断発生する具体的リスク
養生・作業区分の誤設定養生簡易で問題なしと判断・粉じん飛散、ばく露リスク増大
・近隣トラブル
届出・書類不足届出不要と判断・行政指導、是正命令、罰則
・工事中断や遅延
工事進行後の発覚非含有前提で着工・工期の大幅見直し
・再養生、追加費用発生
元請・下請けの責任問題「ノンアス」表記を鵜呑み・説明責任の発生
・契約トラブルや費用負担の押し付け合い
発注者への信頼低下安全と誤認して工事実施・不信感の増加
・再発防止要求
・受注機会の減少

過去の規制値を基準に「非含有」と判断してしまうと、現場ではこのようなさまざまなリスクが連鎖的に発生します。特に、養生不足や届出漏れといった初期の判断ミスは、工事工程の見直しや追加コスト、関係者間の責任問題へと発展しやすく、最終的には発注者からの信頼低下にもつながりかねません。
また何より、安全面において作業員のばく露リスクや周辺環境への被害も大きくなる危険性があります。
資料に「ノンアス」や「ゼロアス」などと記載されているだけでは現在の基準での安全性を保証する根拠にはなりません。
表記を鵜呑みにせず、現行法に基づいた分析による確認が欠かせないことを改めて意識しましょう。


現行基準で安全に判断するために必要なこと

最後に、誤判断を避け、安全に工事を進めるために押さえておくべきポイントを整理します。

  • 現行法令に基づく含有判定を行う
    現在は重量比0.1%を基準とした規制が適用されています。過去基準での「非含有」判定が、現行基準でも有効とは限らない点を理解しておくことが不可欠です。

  • 資料や図面の記載だけで判断しない
    「ノンアス」「ゼロアス」といった表記は、作成当時の基準に基づいて記載されています。記載内容を鵜呑みにせず、必ず作成年代や当時の規制値、改修履歴などを確認することが重要です。

  • 建材の使用年代・施工履歴を確認する
    建物の竣工時期や過去の改修履歴によって、異なる年代の建材が混在していることもございます。年代が古い、または不明な場合は、含有の可能性を前提に検討する必要があります。

  • アスベスト分析を実施する
    最も確実な判断方法は、対象建材の試料を採取し、現在の基準での分析結果を得ることです。分析結果に基づく判断は、安全面・法令面の双方で確実性が高まります。

  • 疑問点は着工前に専門機関へ相談する
    判断に迷う場合は、デイラボなどアスベストの専門機関に相談することで、着工後の手戻りや追加対応を防ぐことができます。早期確認が、工期・コスト・安全性すべてのリスク低減につながります。

現場の安全と法令遵守を確実にするためには、資料の記載だけに頼らず、現行基準での正確な分析に基づいて判断することが不可欠です。少しでも不確実な点があれば、早めの確認がトラブル防止につながります。


まとめ:アスベスト調査・採取・分析は信頼と実績のデイラボへ

本記事では、アスベスト規制値の変遷や「ノンアス」や「ゼロアス」表記との齟齬が生じてしまう背景、そして実例を基に誤判断によるリスクについて整理しました。過去の資料だけでは現在の基準を満たしているか判断できない場面もあるため、建材の状態や年代に応じて適切な確認を行うことが重要です。正確な情報に基づく判断が、現場の安全と確実な工事につながります。

弊社では事前調査一式、採取、分析だけといった依頼もお受けすることが出来ますので、是非ご相談ください。その他アスベストに関して初歩的な質問でも構いません。会社のアスベスト対策に関しての体制づくりも一からサポートいたします。
ご相談・ご不明な点等ございましたら、お気軽に株式会社デイラボまでお問い合わせください。

TIPS「石綿とは?」

「石綿」とは「せきめん」「アスベスト」とも呼ばれており細長い形の天然の鉱物繊維である。
優れた特性を持っている反面、微細なものがいったん空気中に放出されると、消滅することなく長期浮遊し、人がそれを吸い込むと病気になる危険性が高まることから、石綿ばく露を防止することは極めて重要な課題となっている。

引用:建設業労働災害防止協会|石綿作業主任者技能講習テキスト

<調査結果報告書 サンプル>

<分析結果報告書 サンプル>

また当社では、アスベスト分析業務だけでなく、貴社社員・協力業者様向けのアスベスト事前調査についての勉強会なども行うことも可能です。 1時間程度のお時間を頂き、法改正で変わったこと/今後対応しなければいけないこと/発注者様への説明/解体や修繕等の工事時に気を付けなければならないことなどをお話させて頂きます。 対面でもZOOMなどでのウェビナーでも対応可能ですので、全国どのエリアのお客様でもまずはお気軽にお問合せください。

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