【図解】建物オーナー様・工事発注者様の目線で見る《アスベスト含有みなし工事》の損と得!

本記事の要約

  • みなしとは、対象の建材に対して「アスベストが入っているものとして扱う」ことが出来る判定である。
  • みなしとは、分析調査のみを省略できる。(事前調査は省略できない。
  • みなし工事を行った材料がそのまま建築物に残っている場合は、分析調査にてアスベスト使用の有無を明らかにしない限り、都度【みなし工事費用】をランニングコスト的に負担しなければならない。
2023年10月1日より、【工事前の石綿使用の有無の事前調査 (以下、事前調査)】は「建築物石綿含有建材調査者(以下、調査者)」により実施されるものとして法改正・施行され、ますますその重要性が認知され始めている中、弊社に多くご相談いただく内容として、「アスベスト含有みなし工事(以下、みなし工事)は、どの規模の工事で取り扱うべきなのか」「分析調査費を下回るケースはどのようなものなのか」「みなし工事は得なのか、損なのか」というご相談が多くございます。
※後述いたしますが、「みなし」での工事を行う際に事前調査が不要ということではございません。原則として、事前調査(書面/目視調査)を実施し、そのうえで「みなし判定」もしくは「分析調査での石綿有無判定」を行う必要がございます
本記事では、「みなし工事」を行う場合の【建物オーナー様・工事発注者様】目線での考え方、並びに工事を請け負われる元受け事業者様でご提案していただくための考え方を掲載させていただきます。
大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」※1となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要となりました。

※1 調査の対象を外れる要件もいくつかございます(こちらの記事を参照

【前提】アスベストのみなし判定とは?

対象の建材に対して「アスベストが入っているものとして扱う」ことが出来る判定です。
アスベスト含有のあり/なしをはっきりと判断するには、デイラボのようなアスベスト分析の専門機関に分析を依頼する必要があります。一方で、分析を行わずアスベスト含有しているものとして扱う方式をみなし判定と言います。

みなし判定の詳細は、以下の記事にて選択方法やトータルコストの考え方を解説しておりますので、是非ご確認ください。

みなし判定の選択方法トータルコストについて解説

  • 採取・分析を行わずにアスベストが含有していると扱う「みなし判定」という手法がある
  • みなし判定を採用した場合、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならない
  • みなし判定 or アスベスト分析の判断は、「みなし判定を選択せざるを得ない場合」を除き、トータルの手間とコストから判断する
  • トータルコストはアスベスト含有の確率によって変化する

【前提】”みなし”で工事をする場合においても事前調査結果の備え付け/届出/発注者への説明/工事の際の暴露防止・安全対策は義務!

以下、厚生労働省・環境省の代表的な法令やマニュアル等に「みなし」について記載されている内容を要約すると、
「”みなし”は、適切な措置(飛散防止、安全衛生等)を講ずる場合、分析調査を省略できる」と記載されています。

みなし判定は、あくまで分析調査を省略できるものであって、「書面調査/目視調査」「調査結果報告書の作成/届出」その他必要な措置を簡略化できるものではないということです。

第二章 石綿等を取り扱う業務等に係る措置
第一節 解体等の業務に係る措置
(事前調査及び分析調査)
第三条 3項4 事業者は、事前調査を行ったにもかかわらず、当該解体等対象建築物等について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無について、分析による調査(以下「分析調査」という。)を行わなければならない。ただし、事業者が、当該解体等対象建築物等について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法(以下「法」という。)及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない。

石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)

(2)分析調査
書面調査及び現地での目視調査で石綿含有の有無が把握できない場合は、現地で当該建材を採取し、分析調査を行う。ただし、石綿含有が不明な建材を石綿含有ありとみなして飛散防止対策を行う場合は分析調査を行う必要はない。石綿含有ありとみなした場合、除去等の際は、例えば吹き付けられた材料であればクロシドライトが吹き付けられているものとみなして措置を講じる等、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならない。

建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和3年3月)

表 1.3 各建材の石綿の有無に関する判断の概略
・石綿の含有の有無が不明な場合においては、石綿則第3条第5項に基づく分析調査を行う必要があるが、石綿が含有されているとみなして法令上の措置を講じる場合には、分析を行わないことができる。

石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル【第2版】

みなし工事を行った際のメリット・デメリット

では、この「みなし工事」を行う際のメリットデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
石綿障害予防規則の解説では以下のように述べられています。

○ 第5項ただし書は、本来は石綿等の使用の有無を分析調査し、石綿等が使用されていることが明らかとなった場合に必要な措置を講ずべきものであるが、石綿等が使用されているものとみなして必要な措置を行うことにより、分析調査を行うよりも費用負担が軽減される場合があること又は工期が短縮できる場合があることから規定したのであること。この場合、みなすか否かについては、第1項の調査を行った結果を踏まえて事業者が判断するものであること。

石綿障害予防規則の解説

よって、「みなし工事」でのメリットは以下のようになります。
  • 工期を短縮することができる。
  • 分析調査を行うよりも費用負担が軽減される場合がある。(事前調査を省略するという意ではない)
では、デメリットはどのようなものがあるでしょうか。このデメリットについて、詳細に述べている文書はありませんので、想定される事柄をいくつか挙げます。
  • アスベスト対策工事を行う必要があるため、工期が伸び、工事費用・産廃費用(※)等が増加する。(時間的・金銭的コスト)
  • アスベスト対策工事のための労務が発生する。(労務コスト)
  • 改修工事の中でも特に【部分撤去や加工を施す工事】によって、アスベストの有無が不明な建材が建築物内に残る。(リスク・ランニングコスト)
※石綿を 0.1 重量%超えて含有する場合は、石綿含有成形板等として除去を行い、廃棄物処理法及び地方公共団体の定める条例等の規制に基づき、石綿含有廃棄物として適正に処理する必要がある。前述の通り、石綿等が使用されているものとみなして必要な措置を行う必要があるため、同様に対応する。
この【メリット】【デメリット】にて述べている《分析調査にかかる工期・費用》と《アスベスト対策工事にかかる工期・費用》を照らし合わせ、分析調査を行うよりも費用負担が少ない場合等は「みなし工事」を行う方が良いと考えられます。

建物オーナー様・工事発注者様の目線で考えるメリット・デメリット

前述の考え方は、直面している工事に視点を置いた考え方です。では、建物オーナー様・工事発注者様の視点で考えてみた場合はどうでしょうか。

解体工事の場合は、「みなし工事」により適切なアスベスト対策工事が行われれば、アスベストの使用が懸念されている材料は全て撤去されます。よって、(建物そのものが存在しなくなるので当然ですが)その後の事前調査は不要になります。

【デメリット】の部分で述べている《改修工事の中でも特に【部分撤去や加工を施す工事】によって、アスベストの有無が不明な建材が建築物内に残る》事例の場合は、その後、何かしらの工事(解体工事を含む)を行う度に【みなし工事or分析調査の選択】を行う必要がございます。

つまり、みなし工事を行った材料がそのまま建築物に残っている場合は、分析調査にてアスベスト使用の有無を明らかにしない限り、都度【みなし工事費用 (デメリット項目参照)】をランニングコスト的に負担しなければなりません。

これは、建物オーナー様・工事発注者様の視点で見ればデメリットと考えられます。
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単一の工事で見るか、今後の工事を見据えるか

本記事では、建物オーナー様・工事発注者様の視点で考えた場合の、《みなし工事》のメリット・デメリットについて掲載いたしました。
建築物は施工状況や構造、立地など様々な条件により、その様相が異なります。それぞれの建築物に適した保守保全計画や工事計画が必要です。それらを実施するにあたり、オーナー様・工事発注者様の視点ではどのようなメリット・デメリットがあるのかを考える必要があります。
また、オーナー様・工事発注者様の視点だけではなく、工事作業に従事される方・工事周辺環境への配慮も重要になります。
工事を実施される事業者様につきましては、適切な調査・工事の実施をお願いいたします。

適切な調査・適切な工事を

みなし判定は、必要な処置を講じれば分析調査を省略できるものであって、「書面調査/目視調査」「調査結果報告書の作成/届出」その他必要な措置を簡略化できるものではございません。
みなし判定の誤った認識により、行政指導を受けないように適切な対策を実施頂ければと思います。
昨今のアスベストに対する法規制の強化から、今後一層厳しい取り締まりが行われることと予想します。皆様におかれましても、適切な対応を実施頂ければと思います。

アスベスト分析調査はデイラボへ

みなし判定ではなく、アスベストの分析調査を選択される場合には是非デイラボにご相談ください。

デイラボでは、24時間でアスベスト分析結果報告を行う「1DAYプラン」をご用意しております。また、計画的なアスベスト分析には、納期を調整することで費用を抑えられる「S(ショート),M(ミドル),L(ロング)」等、お客様のニーズに合わせたプランを提供しております。

受付は全国対応しており、関東圏のお客様においては直接持ち込み頂くことも可能です。
国内最大級ラボを構えており、大量検体の分析を行うことも可能です。

アスベスト分析を検討される場合は是非デイラボまでお問い合わせください。

まとめ

弊社では、アスベスト分析業務だけでなく、貴社社員・協力業者様向けのアスベスト事前調査についての勉強会なども行うことも可能です。

1時間程度のお時間を頂き、今回の法改正で変わったこと/今後対応しなければいけないこと/発注者様への説明/工事時に気を付けなければならないことなどをお話させて頂きます。
対面でもZOOMなどでのウェビナーでも対応可能ですので、まずはお気軽にお問合せください。
また、このような情報も含め、アスベストに関する最新情報をメールマガジンとして配信も行っております。

※配信対象は、お取引を頂きましたお客様に加え、お見積りを提出させていただきましたお客様も対象となりますので是非一度お問い合わせ頂ければと思います。