失敗しないためのアスベストみなし判定
本記事の要約
- 採取・分析を行わずにアスベストが含有していると扱う「みなし判定」という手法がある
- みなし判定を採用した場合、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならない
- みなし判定 or アスベスト分析の判断は、「みなし判定を選択せざるを得ない場合」を除き、トータルの手間とコストから判断する
- トータルコストはアスベスト含有の確率によって変化する
アスベストの事前調査はすべての工事が対象です
大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事、もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要となりました。 ■厚生労働省リーフレット https://www.nikkenren.com/news/pdf/oshirase/1883/127.pdf
アスベストのみなし判定とは?
対象の建材に対して「アスベストが入っているものとのして扱う」ことが出来る判定です。
アスベスト含有のあり/なしをはっきりと判断するには、デイラボのようなアスベスト分析の専門機関に分析を依頼する必要があります。一方で、分析を行わずアスベスト含有しているものとして扱う方式をみなし判定と言います。
以下、厚生労働省の石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアルでも「試料採取→分析」
に並び「石綿ありみなし」という形でみなし判定が定義されています。
《建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル 令和3年3月版》
みなし判定とする理由としては主に以下のようなものがあり、どちらを選択するかは事業者や発注者に委ねられています。
みなし判定を採用するパターン
①再資源化の需要がない(再資源化には、石綿なしを証明する必要あり)
②含有の可能性が高い(特定年代のレベル1、レベル2建材に多い)
③検体の採取が困難である(公共空間や危険個所)
これらのような状況でない限りは、「工事にかかる手間とトータル費用」で対応を選択することがベストとなります。
工事にかかる手間
厚生労働省のリーフレットには、解体・改修工事の事前処置として、以下のような対応が必要になると記載されており、作業計画や労働基準監督署への事前の届け出、作業時の処置においてはみなし判定を行った際にも必要になってきます。
《厚生労働省リーフレット 解体・改修・各種設備工事を行う施工業者の皆様へ》
その後の作業について「必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい石綿(アスベスト)対策」を講じなければなりません。
書面調査及び現地での目視調査で石綿含有の有無が把握できない場合は、現地で当該建材を採取し、分析調査を行う。ただし、石綿含有が不明な建材を石綿含有ありとみなして飛散防止対策を行う場合は分析調査を行う必要はない。石綿含有ありとみなした場合、除去等の際は、例えば吹き付けられた材料であればクロシドライトが吹き付けられているものとみなして措置を講じる等、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならない。
厚生労働省 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル
石綿含有建材であるとみなす場合、該当する建材の種類については書面による調査及び現地での目視による調査により、調査者等が確認する。特に、けい酸カルシウム板第1種と他の成形板等の区別、及びパーライト・バーミキュライトと仕上塗材の区別は適用される作業基準が異なってくるため注意が必要である。
では、どのような作業が必要になるのかを確認してみましょう。
産廃業者の処分費用に加え、みなしを判定を行うことで作業工程も増えるため、人件費・納期についてもこれらを想定する必要があります。
以下は、含有/非含有の際の作業工程をまとめたものとなります。赤枠で囲った部分が含有もしくはみなし判定を行った際に増える工程の部分となります。
《成形板の石綿含有/不含有時の除去・撤去作業工程例 グループ会社 株式会社アスマップ提供》
※大防法及び安衛法・石綿則の届出はレベル1、2建材の場合必要になります。 ※廃棄もアスベスト含有建材と同様になりますのでご注意ください。
トータル費用の考え方
採取・分析 or みなし判定で発生する費用について考えていきます。
結論から申し上げると、「アスベスト含有の確率」から対応を選択する形がベストとなります。
まず、大枠でアスベストの有無と対象方法で以下のパターンに分類します。
※レベル3建材を解体・改修工事する場合
前提として、一般的には「処分費用>採取・分析費用」となるため、アスベスト含有の確率を全く考慮しなければ、分析を行った方が安価に対応できます。 アスベスト含有の確率が高い建材に対しては、採取・分析を行った結果、含有していた場合は更に処分も対応しなければならないのでトータル費用は高額になります(パターンA) このような状況の場合は、みなし判定で採取・分析費用を圧縮するという対応は有効と言えます(パターンB) 逆に、アスベスト含有の確率が低い建材に対しては、採取・分析を行った方が安価に対応できるケースが多くなります。(パターンC) アスベスト含有の確率が低にも関わらずみなし判定として扱ってしまうとコスト効率は悪くなる可能性が高くなります。(パターンD) 更に、昨今レベル3建材が大量にみなし判定され、アスベスト処分場がひっ迫することで処分費用が高騰すると予測しており、パターンDの選択には注意が必要となります。 では、分析を依頼した中で実際にどれくらいの確率で含有となっているでしょうか。 弊社の過去実績(2022年11月現在)としては、 全依頼中2~3割程度が含有であり、残りの7~8割については非含有 という結果になっております。 ※建材の種類によっては非含有の割合が更に上がるもの(石膏ボード等)もあります。 上記の内容から、最適な対応を選択いただければと思います。 みなし判定の場合に実際にかかるコスト試算については、弊社のグループ会社のアスマップにてコストを試算できるシステムを構築いたしました。みなし判定をした方が良いのかどうか判断に迷われたらぜひ、弊社のグループ会社のアスマップまでご連絡ください。
アスベスト分析納期について
アスベスト分析にかかる費用も大事ですが、納期を重要視されるお客様もいらっしゃいます。 これは、急にアスベスト調査対象建材が見つかったり、急な対応を迫られるケースがあり、 工期が遅延することで重機のリース費用や人件費等で大きな影響を与えるため、結果的に納期の重要度が上がることになります。 デイラボでは、このようなケースにも対応できる24時間でアスベスト分析結果報告を行う「1DAYプラン」をご用意しております。また、計画的なアスベスト分析には、納期を調整することで費用を抑えられる「S(ショート),M(ミドル),L(ロング)」等、お客様のニーズに合わせたプランを提供しております。 アスベスト分析を検討される場合は是非デイラボまでお問い合わせください。
まとめ
重要なのは、「工事にかかるトータルコスト」そして「アスベストばく露の防止・飛散対策」です。検査対象・工事の状況などから最適な方法で対策を実施し、正確なコストの算出と適切な工事の実施を行って頂ければ幸いです。
弊社では、アスベスト分析業務だけでなく、貴社社員・協力業者様向けのアスベスト事前調査についての勉強会なども行うことも可能です。 1時間程度のお時間を頂き、今回の法改正で変わったこと/今後対応しなければいけないこと/発注者様への説明/工事時に気を付けなければならないことなどをお話させて頂きます。 対面でもZOOMなどでのウェビナーでも対応可能ですので、まずはお気軽にお問合せください。
また、このような情報も含め、アスベストに関する最新情報をメールマガジンとして配信も行っております。 ※配信対象は、お取引を頂きましたお客様に加え、お見積りを提出させていただきましたお客様も対象となりますので是非一度お問い合わせ頂ければと思います。