【アスベスト】採取・分析依頼時に注意しておきたいこと

本記事の要約

  • 分析対象建材に「熱」や「酸」が加わった経緯がある場合、分析調査に影響を与えてしまう
  • このような場合は、事前に分析機関に伝えることで想定外の時間がかかることを予防できる

すべての工事においてアスベスト調査が必要

大気汚染防止法などの法改正により、解体・改修工事の前のアスベスト事前調査が「すべての工事において原則必須」※1となり、その調査結果を一定規模以上の解体工事もしくは一定金額以上の改修工事については調査結果の届出が必要となりました。

※1 調査の対象を外れる要件もいくつかございます(こちらの記事を参照)
事前調査を行う中で、検査/分析を行い、対象建材に対してアスベストの有無を判定する分析調査があります。分析調査では、建材の状態や外的要因の履歴など分析に影響を及ぼす要素がいくつかございます。

本記事では、分析調査会社に分析を依頼する際に伝えておくべきことや採取時に留意しておくべき分析に影響を及ぼす要素を本記事では解説いたします。

代表する要素は熱と酸

分析調査に影響を与える要素として、代表的な要素は大きく熱と酸になります。
これらが分析対象建材に加わった経緯(履歴)がある場合、アスベストの光学的性質などに変化が生じ、分析に影響を及ぼすことがあります。

ここでは、「熱が加わった経緯がある」状態を『熱履歴がある』、「酸が加わった経緯がある」状態を「酸履歴がある」と表現いたします。

熱履歴がある建材の分析における影響について

前述の通り、加熱を受けるとアスベストの光学的性質が変化いたします。
代表的な3物質(クリソタイル、クロシドライト、アモサイト)における熱の影響は以下の通りになります。

これにより、来含有となるものが非含有という間違った結果になる可能性がございます

クロシドライトの場合、300-500℃の熱に短時間曝しただけでも色の変化や屈折率、複屈折の増大が生じる。クロシドライトは加熱によって以下のような変化をする。

・伸長の符号の正負の反転(負→正)
・色の変化(青色→灰色→黄色→橙~茶色)
・多色性の変化(灰色の段階で一旦弱まった後、多色性が再度あらわれる)

アモサイトは加熱しても伸長の符号が変化しない。色はもともとの灰色~茶色から黄色、焦げ茶へと変化し、多色性が見られるようになる。500℃以上の加熱を受けたクロシドライトとアモサイトは光学的性質がよく似てくるため、偏光顕微鏡では区別が不可能になる。
クリソタイルの屈折率は600℃以上の熱にしばらく曝されると上昇する。複屈折は小さくなり、稀に伸長の符号の正負が反転する場合がある。色は薄い茶色になる。

留意点:
熱影響が進むと最終的には非アスベストに変化するが、光学的性質が変化してもアスベストとしての性質が残っている場合もあるため、加熱による影響が疑われる場合は透過型電子顕微鏡やX 線回折分析法により元の結晶構造が残っているかどうかの確認を行うことが推奨される。

石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル【第2版】(令和4年3月)厚生労働省_P.59-60

酸履歴がある建材の分析における影響において

クリソタイルを酸性の液体に曝すとマグネシウムが溶脱することにより屈折率が下がる場合がある。溶脱が続くと複屈折も低下し、最終的には光学的等方体に変化する。溶脱は試料調製や前処理における酸の使用のほか、腐食性の水(カルシウム、マグネシウムに乏しくpH の低い水)によっても起きる。溶脱クリソタイルは長く雨に曝された屋根のセメント材などにみられる場合がある。
 
留意点:長く雨に曝された可能性のある試料を分析する場合は溶脱クリソタイルが存在する可能性があることに留意する。

石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル【第2版】(令和4年3月)厚生労働省_P.59-60

分析会社に事前に伝えるべき例

前述の通り、熱や酸の履歴がある建材については、光学的性質への影響が懸念されます。
以下のような例の建材を分析機関に依頼する場合、事前に熱・酸履歴を伝えることで、分析機関は正確な分析結果をお伝えすることができます。

例1)	火災による家屋や建築物の解体・改修工事の建築材料
⇒本例については、火災の影響を受けた部分から離れた部位を採取するなどの対応も考えられます。(同一建材の場合のみ適用)

例2)	熔鉱炉・電気炉や陶芸窯、ボイラーなどの加熱による加工を行う工作物およびそれらに隣接する建築材料

例3)	酸による加工を行う工作物およびそれらに隣接する建築材料

※上記はあくまで一例なので、上記以外の事例もありますことをご留意ください。

まとめ

建材が熱や酸に晒された履歴がある場合、アスベスト分析に影響が出る場合がございます。
これらの事実確認やその調査によって分析調査に想定外の時間がかかる場合もございますので、アスベスト分析機関にご依頼の際、そのような影響を受けていることが事前に分かる材料については、お伝え頂くことが望ましいと考えられます。

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