- 東京都では、国の大気汚染防止法に加えて、環境確保条例や自治体独自の手続きへの対応が必要な場合がある。
- 東京都内ではアスベストの調査・分析や除去等に利用できる補助制度があり、対象建材や補助額、申請条件は自治体によって異なる。
- 自治体によっては、吹付け材だけでなくレベル3相当の建材まで分析費の補助対象としている場合がある。
- みなし判定は分析を省略できる一方、含有建材としての対策が必要となるため、工事全体の費用や工程を踏まえて判断することが重要である。
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東京都内で建物の解体や改修工事を行う際は、国のアスベスト規制だけでなく、東京都や工事場所を管轄する自治体のルールにも注意が必要です。
東京都では、大気汚染防止法に加えて都独自の「環境確保条例」が設けられているほか、工事場所や規模によって報告・届出先が異なり、自治体独自の要綱や手続きが定められている場合もあります。
また、アスベストの調査・分析や除去等に利用できる補助制度も自治体によって異なります。中には、レベル3相当の建材まで分析費の補助対象としている自治体もあります。
本記事では、東京都におけるアスベストの届出や自治体独自のルール、補助金情報に加え、「みなし判定」と分析の考え方まで、工事前に押さえておきたいポイントをまとめて解説します。
目次
東京都内でも異なる|自治体ごとの届出窓口・独自ルールに注意

まず、東京都でアスベストに関する工事を行う際は、国の大気汚染防止法や東京都の環境確保条例への対応だけでなく、工事を行う自治体ごとの手続きにも注意が必要です。
東京都内でも、工事現場の所在地や建築物等の規模によって報告・届出先が異なるほか、自治体独自の要綱や手続きが定められている場合があります。
1.工事場所によって報告・届出先が異なる
まず、東京都内のアスベストに関する報告・届出先は、作業を行う場所(工事現場)の住所や建築物等の規模によって異なります。「23区なら区役所、多摩地域なら東京都」と単純に分けることはできません。
工事を計画する際は、東京都環境局が公開している「報告・届出窓口」を確認し、どこへ提出する必要があるのかを事前に把握しておきましょう。
なお、石綿事前調査結果報告システムから電子報告する場合は、工事場所の住所に応じて報告先が自動的に選択されます。
2.自治体独自の要綱や手続きが定められている場合も
東京都内では、自治体によって解体工事などに関する独自の要綱や手続きが設けられている場合があります。
例えば足立区では、「建築物の解体工事の事前周知に関する要綱」が定められており、床面積80㎡以上の建築物を解体する場合、工事前の標識設置や近隣住民への説明が必要です。
近隣住民への説明事項には、工事の期間や作業時間などに加えて、「石綿(アスベスト)等の使用の有無及びその除去方法」も含まれています。
このように、東京都内では工事場所によって必要な手続きが異なる場合があります。工事を計画する際は、所管する自治体の公式ホームページで最新情報を確認し、判断に迷う場合は工事着手前に自治体の窓口へ確認しておきましょう。
参考:足立区「建築物の解体工事の事前周知に関する要綱について」
東京都におけるアスベスト調査・除去の補助金情報

自治体によって異なるのは、届出や手続きだけではありません。
東京都内では、アスベストの調査・分析や除去等にかかる費用について、独自の補助制度を設けている自治体があります。ただし、補助対象となる建材や建築物、補助額、申請時期などは自治体によって大きく異なります。
そのため、アスベストの調査や除去を予定している場合は、建物が所在する自治体に利用できる補助制度がないか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
1.「分析調査」と「除去等工事」で利用できる補助制度がある
アスベストに関する補助制度というと、除去工事に対する補助をイメージする方も多いかもしれません。
しかし東京都内では、アスベストの含有を確認するための分析調査費を補助している自治体もあります。
例えば品川区では、アスベスト分析調査費について費用の10分の10、1棟あたり上限5万円を助成しています。さらに、除去工事についても費用の3分の2を助成し、戸建住宅では上限50万円、共同住宅等では上限100万円としています。
一方、江東区ではアスベストを含有している可能性のある吹付け材や保温材等の分析調査について、費用の2分の1、上限10万円の助成制度が設けられています。
このように、自治体によって「分析のみ」「分析+除去」など、利用できる制度の範囲にも違いがあります。
2.東京都内のアスベスト補助制度を自治体別に比較
東京都内のアスベスト補助制度で特に注意したいのが、自治体によって補助対象となる建材や補助内容、申請条件などが異なることです。
そこで、東京都内の自治体が実施しているアスベストの「調査・分析」と「除去等」に関する補助制度を一覧にまとめました。
同じ東京都内でも、補助制度の有無だけでなく、対象となる建材や補助額などに違いがあります。
<2026年10月30日現在>
| 自治体 | 分析調査 | 除去等 | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 千代田区 | ✔ | ✔ | 〇 | – | – |
| 港区 | ✔ | ✔ | 〇 | 〇 | – |
| 新宿区 | – | ✔ | 〇 | – | – |
| 文京区 | ✔ | 本年度分終了 | 〇 | 〇 | △ |
| 台東区 | ✔ | ✔ | 〇 | – | – |
| 墨田区 | ✔ | ✔ | 〇 | 〇 | – |
| 江東区 | ✔ | – | 〇 | 〇 | – |
| 品川区 | 本年度分終了 | ✔ | 〇 | – | – |
| 目黒区 | ✔ | – | 〇 | 〇 | △ |
| 大田区 | ✔ | – | 〇 | 〇 | 〇 |
| 杉並区 | ✔ | – | 〇 | 〇 | 〇 |
| 豊島区 | ✔ | – | 〇 | – | – |
| 板橋区 | ✔ | – | 〇 | 〇 | – |
| 練馬区 | ✔ | ✔ | 〇 | – | – |
| 足立区 | ✔ | ✔ | 〇 | △ | △ |
| 葛飾区 | ✔ | ✔ | 〇 | – | – |
| 江戸川区 | 本年度分終了 | 本年度分終了 | 〇 | – | – |
| 府中市 | ✔ | ✔ | 〇 | – | – |
このように、東京都内でもアスベスト補助制度の内容は自治体によって異なります。特に注目したいのが、補助対象となる建材の範囲です。
多くの自治体では吹付け材などを中心に補助対象としていますが、自治体によってはレベル3相当の建材まで分析費の補助対象としている場合があります。
例えば杉並区では、補助対象建材を「特定建築材料に該当する可能性があるすべての建材」としており、吹付け材や断熱材等だけでなく、仕上塗材や成形板等を含むレベル1~3の可能性がある建材が対象です。
一方、多くでは吹付け材が対象とされており、仕上塗材、断熱材、成形板等は補助対象外と明記されています。
このように、同じ東京都内でも、自治体によって補助対象となる建材や補助額、条件には大きな違いがあります。
3.補助制度は分析・工事の「前」に確認する
補助制度の利用を検討する際は、分析や除去工事を進める前に、建物所在地の自治体へ確認することが重要です。
前述のとおり、自治体によって補助制度の有無だけでなく、対象となる建材や建築物、補助額、申請条件なども異なります。そのため、「補助制度がある」という理由だけで判断せず、予定している調査・分析や除去工事が実際に補助対象となるのかを確認しておきましょう。
また、申請のタイミングにも注意が必要です。
例えば杉並区では、補助金の交付決定を受けた後に分析業者と契約し、分析調査を実施する流れとなっています。江東区でも分析調査前の申請が必要で、実施後の申請は認められていません。
さらに、申請期間や予算額が設定されており、年度途中で受付を終了する場合もあります。前項の表からも確認できるように、文京区や品川区、江戸川区は一部助成制度において既に受付を終了しています。
補助制度を利用したい場合は、分析や工事を実施してから調べるのではなく、事前に自治体の最新情報を確認したうえで、調査・分析や工事を進めることを推奨いたします。
「みなし判定=安い」とは限らない|東京都で分析を行うメリット

前項にて、東京都内で利用できるアスベストの補助制度について紹介しましたが、事前調査においては必ずしも分析を行う必要があるわけではありません。
というのも、分析を行わず、対象建材を「アスベストが含まれている」とみなして工事を進める「みなし判定」も認められています。
みなし判定では分析費用や分析にかかる時間を省けるため、一見すると「分析をしない方が安い」と思われるかもしれません。
しかし、比較すべきなのは分析にかかる費用や時間だけではなく、その後の工事や廃棄物処理まで含めた全体のコストと工程です。
🔎 みなし判定では「含有」として工事する必要がある
みなし判定を選択した場合、その建材はアスベストを含有しているものとして扱われます。
そのため、実際にはアスベストを含んでいなかったとしても、下記厚生労働省のマニュアルでは、アスベスト含有、もしくは含有とみなした場合には、図の黄色部分の作業をすべて行う必要があると記載されています。加えて、この大半の作業は有資格者が行う必要があります。
<レベル1・2フロー>
<レベル3フロー>
上記のようにみなし判定によって分析自体は省略できますが、その他の作業が増え、より費用や時間がかかる可能性があります。
特に対象となる建材の量が多い場合には、分析費用を省略したメリットよりも、含有建材として工事を行うことによる費用負担の方が大きくなるケースも十分考えられます。
🔎 分析費だけでなく「工事全体のコスト」で比較する
一方、分析によって「アスベスト含有なし」と判定された場合、その建材については石綿含有建材としての飛散防止措置や廃棄物処理が不要になります。
そのため、分析を行うかどうかを判断する際は、「分析費用がかかるか」だけで比較するのではなく、含有とみなして工事を行った場合に必要となる対策費や廃棄物処理費、工期への影響まで含めて比較することが重要です。
もちろん、分析の結果「含有」と判定されれば、分析費用に加えて必要な石綿対策を行うことになります。そのため、すべてのケースで分析を行った方が安くなるわけではありません。
しかし、「分析を省略できるから、みなし判定の方が安い」とは限らないことを理解し、工事全体を見据えて判断することが大切です。
デイラボでは、「みなし工事」を行う場合の【建物オーナー様・工事発注者様】目線での考え方、ならびに工事を請け負われる元受け事業者様でご提案していただくための考え方を過去記事にてまとめております。
【図解】建物オーナー様・工事発注者様の目線で見る《アスベスト含有みなし工事》の損と得!
みなし判定は、必要な処置を講じれば分析調査を省略できるものであって、「書面調査/目視調査」「調査結果報告書の作成/届出」その他必要な措置を簡略化できるものではございません。
みなし判定の誤った認識により、行政指導を受けないように適切な対策を実施頂ければと思います。
本記事では、建物オーナー様・工事発注者様の視点で考えた場合の、《みなし工事》のメリット・デメリットについて解説しております。
実際に「みなし工事は得なのか、損なのか」というご相談を多くいただきますので、是非この記事を通して具体的に確認してみて下さい。
🔎 東京都では条例への対応まで含めて検討する
ここまでの考え方は全国共通ですが、東京都では国の大気汚染防止法に加えて、環境確保条例による独自の規制が設けられています。
一定の要件に該当する工事では、「石綿飛散防止方法等計画届出書」の提出に加えて、作業前・作業中・作業後の大気中の石綿濃度測定なども必要になります。
みなし判定によって石綿含有として工事を行う場合には、こうした東京都独自の規制への対応が必要になる可能性も含めて、工事全体の費用や工程を検討する必要があります。
そのため東京都でアスベスト工事を計画する際は、特に安易にみなし判定を選択するのではなく、「分析した場合」と「含有とみなして施工した場合」の費用や工程を比較したうえで判断することが大切です。
まとめ:東京都でアスベスト対策を進める際に確認したいこと
東京都で解体・改修工事を行う際は、国の大気汚染防止法に加えて、東京都の環境確保条例や、工事場所を管轄する自治体ごとの手続きにも注意が必要です。
また、東京都内ではアスベストの調査・分析や除去等に利用できる補助制度を設けている自治体もあります。対象となる建材や補助額、申請条件は自治体によって異なるため、工事や分析を進める前に最新情報を確認しておきましょう。
そして、事前調査で「みなし判定」を選択する場合は、分析費用だけで判断するのではなく、その後の工事や廃棄物処理まで含めた費用・工程を比較し、現場に適した方法を選択することが重要です。
東京都でアスベストに関する工事を計画する際は、「自治体ごとのルール」「利用できる補助制度」「分析するか、みなし判定とするか」まで事前に確認したうえで、工事計画を進めていきましょう。
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<調査結果報告書 サンプル>


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